離婚協議中は離婚することで頭がいっぱいで、離婚後の生活については細かく考えられないですよね。しかし、夫婦が離婚するということは、別居してお互い他人になって生計も別々になるということです。
本記事ではいざ離婚して様々な問題やトラブルに悩まないように、 離婚前に夫婦で話し合うべきことや、離婚後の生活が困らないように準備すべきことなどを解説していきます。
目次
離婚後の具体的生活ってどうなる?
離婚後の具体的生活が一体どうなるのか?ここではよくある疑問について具体的に解説していきます。
離婚後の生活に必要なお金はいくら?
新居に引越しする場合、住む地域や家賃によっても変わりますが、引っ越しの費用と当面の生活費も込みで100万円くらいは用意しておいた方が良いでしょう。
新居に引越しをすると、まず敷金や礼金、生活に必要な家具や家電などでまとまった金が必要になります。そういった意味で100万円程度あればまず当面の生活費として安心できますよね。
養育費を払い続けてくれるか心配な場合はどうしたらよいか?
離婚して子供を自分が引き取る場合は非監護親(子供を引き取らない親)に対して養育費を請求することが可能です。
しかし、事前によく対策を考えておかないと不払いになることもあるので、きちんと対策は考えておきましょう。
1.養育費の取り決めはきちんとしておく !
養育費の取り決め方は、 大きく分けて2つの方法があります。1つは夫婦間双方で話し合って決める場合と、2つめに家庭裁判所へ調停審判を申し立てる方法です。
まず、夫婦間の話し合いがおこなわれます。それが決裂した場合は家庭裁判所に離婚調停を申し立てることで、 調停の中で養育費の金額や支払い方法について決めることができます。万が一家庭裁判所の離婚調停で合意できなかった場合は、地方裁判所に提訴し離婚および養育費の請求をして、地方裁判所の判断を仰ぐことになります。
2.養育費が不払いとなった場合の3つの対処法
非監護親が養育費の取り決めを守らないで、不払いとなった場合には次の3つの対処法があります。
1)強制執行の手続き処理をする
強制執行力のある書面(債務名義)があれば、 「相手の財産から強制的に支払いに充てる」強制執行を申し立てることができます。
債務名義と認められるには以下のような書面が必要になります。
・確定判決
・和解調書
・調停調書
・審判調書
・公正証書
2)「履行勧告・履行命令」の制度で対応
履行勧告・履行命令は、手続き費用なしで口頭での申し立てで受け付けてもらえます。強制執行に比べて簡単にできるところがメリットです。
ただし公正証書だけでは利用できません。家庭裁判所の調停や審判調書に養育費の支払いが記載されている必要があります。履行勧告とは、家庭裁判所が債務履行状況を調査して、相手に対して約束通りに支払うように履行の勧告と督促をしてもらう制度です。
履行勧告をしても支払いを拒否した場合は、家庭裁判所に一定期日までに支払うよう履行命令を発してもらうことができます。履行命令はに正当な理由なく従わない時は、「10万円以下の過料」が課せられます。
履行勧告・履行命令のデメリットは、この制度が自主的に支払うよう促すだけの精度なので相手方にその姿勢がない場合には回収の効果を期待できないことです。強制力が乏しいということで、ほとんど利用されていないのが現状です。
3)弁護士に相談
相手方が養育費を支払わない時、一時的な感情で「強制執行」の手続きに走るのではなく、交渉によって相手方に自主的な支払いを求めることが重要です。 その際には相手方の職場や預金口座、財産の状態などを調査することも必須です。
以上のようなことを踏まえて、まずは弁護士に相談することをお勧めします。弁護士ならその状況に応じて適切なアドバイスをしてもらえるでしょう。
シングルマザーが受けられる公的扶助にはどのようなものがあるか?
公的扶助の中でシングルマザーが受けられる可能性のある制度は7つあります。 離婚する前に 自分の条件で対象になるかどうか、担当の窓口で確認しておきましょう。
<シングルマザーが該当する公的扶助>
1)住宅手当(家賃の補助)
2)童扶養手当
3)児童育成手当
4)生活保護
5)国民年金免除
6)所得税の寡婦控除
7)ひとり親家庭の医療費助成
住宅ローン返済中の家はどうしたらよいか?
基本的に婚姻期間中に購入した不動産であれば、名義がどちらにあったとしても夫婦の共有財産であり財産分与の対象です。
一般的に財産分与の対象はその時点での不動産の時価になりますが、まだ住宅ローンの返済中となっている場合はどう対応すれば良いのでしょうか?
1)アンダーローンの場合(不動産の時価>ローン残高)
不動産の時価よりもローン残高の方が少ない場合は、 不動産を売却して そのお金で残りの住宅ローンを清算し、残金を財産分与として分割する方法がシンプルです。
しかし、どちらか一方が住み続けることを希望した場合は、その人が住宅を所有し残りのローンを引き受け、時価とローン残金の差額を他方に支払うことになります。
2)オーバーローンの場合(不動産の時価<ローン残高)
不動産の時価よりもローン残高の方が大きい場合は 、不動産の売却が難しくなるため銀行のローン名義人がそのまま返済を続ける場合が多いようです。
離婚した後、住宅ローンの名義を夫のままの状態で元妻が住み続ける場合は、いくつかの注意が必要です。
まず名義人である夫が住んでいない場合、住宅ローンの控除が受けられません。また、 元夫がローンを滞納するようなことがあれば、銀行に差し押さえられ競売にかけられてしまう可能性もあります。あくまでも住宅の権利は名義人の夫にあり、売却の権限を持っているため、元妻が住み続けられる保証はありません。
子どもに会わせてもらえるか心配!どうなるの?
離婚したとしても子供との親子関係が失われるわけではありません。子供自身には双方の親と定期的に関係を持ち接触する権利があります(子どもの権利条約9条3項)。 ただし、子供の利益に反する場合は除きます。
両親は子供の権利を守り健全な育成をはかるために、親と子が接触する機会を作らなければなりません
子供の面会の頻度や時間帯は、親同士の話し合いで決めますがうまく合意が取れない場合は、面会交流についての調停を申立て 調停の場で話し合いを持つこともできます。
離婚後の生活に必要なお金を事前に確保しておくことが大切
とりあえず離婚の際に必要となるのが当面の生活費です。その後は経済的に自立した生活をするための収入を確保する必要があります。
まずは離婚後の当面の生活費を準備する
離婚後の新生活を始める時に、即時必要になるのが引っ越し費用や敷金、礼金、家具の購入費などです。 これらの初期費用にはある程度まとまった金額が必要です。
また離婚時にある程度のお金がないと精神的余裕がなくなってしまうので、離婚を意識しだした時から、準備を始めた方がいいでしょう。
また、離婚時には相手に不貞があった場合は慰謝料も請求できます。しかし、実際に確認すると請求できる財産がない場合もあり、そこには高いリスクがあります。したがって、後で慌てないように事前に計画的で確実な資金準備をしておきましょう。
毎月の離婚後の生活費を得るための収入を確保する
専業主婦(主夫)で離婚した場合には、 経済的に自立するために新しい生活拠点で仕事を見つけて収入を確保する必要があります。
離婚後の生活費はどのくらいかかるのか? 子育てをしながらどの程度の収入を得たらよいのか? なかなか難しいところですが 事前にシミュレーションしてライフプランを作っておくと良いでしょう。
離婚後に困らないために夫婦で事前に話し合うべきこと
離婚後に困らないために、離婚の際にその条件についてしっかりと話し合う必要があります。一般的な離婚の条件として夫婦として話し合うべき内容を次にまとめました。
財産分与について
財産分与とは夫婦が婚姻期間中に協力して作り上げた財産を、夫婦の離婚に伴い清算することをいいます。 財産分与の割合は、財産形成にあたり夫婦それぞれの果たした寄与度を考慮して判断します。
一般的な夫婦の場合は寄与の割合を1/2と判断しますので、夫婦の共有財産(現金・預金・有価証券・不動産・借金など)を確認して、1/2ずつ分けることが多いです。
しかし、全ての財産をきっちり1/2に分ける必要はありません。 夫婦間の話し合いによって、財産分与の内容については臨機応変に 分けることができます 。例えば「不動産をもらうから、その分預金は少なくていい 」という合意もできます。
親権者・養育費について
夫婦間に未成年の子供がいる場合は、親権者を定めなければ離婚はできません。 その場合親権者を決める話し合いが必要です。(民法819条1項)
通常は親権を持つ親が実際に子供を監護して育てることになりますが、 夫婦の話し合いで合意に至れば、 親権と監護権を分離して監護権のみをもつ親が子供を実際に育てていくという例もあります。
子供を看護することになった親は、他方の親に養育費を請求することが可能です。 その際は、「養育費の額、支払の時期、始期や終期など」 などについて話し合う必要があります。養育費の額については、裁判所の養育費算定表が公表されているので参考にすると良いでしょう。
慰謝料について
離婚の原因が片方の「不貞行為」などの場合は、相手に対して慰謝料の請求が可能です。この慰謝料に関しても夫婦間の話し合いの対象になります。但し、離婚の原因が「性格の不一致」という場合は、通常は一方だけの責任であるとは考えにくいので慰謝料を請求することは難しくなります
年金分割について
婚姻期間中に支払っていた厚生年金共済年金の保険料納付記録にある金額の最大1/2を分割できる制度のことを年金分割と言います。
分割の対象となる保険料納付記録などを確認したい場合は、婚姻期間中に加入していた年金団体(国民年金や共済年金など)から年金分割のための情報提供通知書 をもらう必要があります。50歳以上の方であれば分割後の「年金見込額」を閲覧することが可能です。
専業主婦(夫)や年収が少ない第3号被保険者については、2008年4月~離婚までの期間の保険料納付記録の1/2を、配偶者との合意がなくても分割できる制度です。
2008年3月以前にも婚姻関係にあったなど、3号分割ができないケースは夫婦間で話し合って分割の割合を決めるか、調停での話し合いで決めることになります。
また、年金分割の対象にならない公的年金や私的年金を分割する場合は、 3号分割のような制度がないので財産分与の話し合いの中で決めていくことになります。
・離婚の条件として夫婦として話し合うべき内容のまとめ
財産分与 | 通常、夫婦の共有財産を1/2ずつ分ける |
親権者・養育費 | 通常は親権者が監護権を持つ。監護権を持っている親が他方に養 育費を請求できる。 |
慰謝料 | 離婚に至る原因が一方の不貞行為にある場合は、他方に対して慰 謝料を請求できる |
年金分割 | 婚姻期間に対応する厚生年金と共済年金の保険料納付記録の最大 で1/2を分割できる制度 |
離婚後の生活を後悔しないように心得ておくこと
皆さんいかがでしたでしょうか? 離婚には大変なエネルギーと時間がかかります。精神的な負担も大きいものとなるでしょう。
しかし、離婚後に「もっときちんとと話しておけばよかった」と後悔しないように、 最後に離婚前に心得ておきたい5つのことを以下に紹介します。
1)主張すべきところはしっかりと主張する
2)自分に有利となりえる証拠を確保しておく
3)周囲の協力や交友関係を大切にする
4)事前にシミュレーションすることで精神的余裕ができる
5)離婚に関する不安は弁護士さんに相談する
以上、五つの心得をしっかりと守り、明るい未来へと進んでいきましょう。