NHK などによる浮気不倫に関する調査で、一生の間の不倫経験率が男性が74%、女性で29.6%と驚くような数値が報告されています。
法律上で問題となる浮気不倫は「不貞行為」と呼ばれるもので、一般的な浮気や不倫とは必ずしも同じではありません。今回は不貞とは何か? その基準となる判断や、ぬぐい切れない疑いがあった時にどう動けばいいのか、慰謝料の請求などについて解説します。
目次
不貞行為とはどんな行為?
婚姻している者同士には貞操義務があり、配偶者ではない異性との性交渉を持つことは認められません。この義務に違反する行為を法律上で不貞行為と呼びます。
ただし、肉体関係までいかない場合でも、相手との性的な密接関係(2人で風呂に入る、愛撫をするなどの性交類似行為)が認められた場合も不貞行為に含まれます。
不貞行為をした男女は 精神的被害を受けた側に法律上慰謝料を支払う義務を負い、不貞行為によって精神的被害を受けたものは慰謝料を請求することができます。 「不貞行為」(民法709条)
不貞行為の典型的な例
ここでは不貞行為とみなされる典型的な例を紹介します。
1)相手と肉体関係がある
肉体関係が認められる場合は、ほぼ確実に不貞行為としてみなされます。注意して欲しいのは肉体関係には性交渉だけでなく、オーラルセックスなどの類似的な行為も含まれる点です。
また、相手がマッチングアプリで知り合った一夜限りの相手や、プロの風俗嬢などであったケースでも肉体関係があれば不貞行為にみなされ、配偶者に対しての離婚請求や慰謝料の請求ができます。
ただし、 相手が出会い系や風俗嬢の場合は、その相手に責任追及することは難しい場合もあります。個々のケースについては弁護士に相談してみると良いでしょう。
2)相手と同棲している
はっきりとした肉体関係の証拠がない場合でも、周辺の状況から肉体関係があったであろうことが十分に予測可能な場合は不貞行為と判断されることがあります。その代表的な例が「同棲」です。
浮気や不倫が長くなると、配偶者がいるにも関わらず別の異性と同棲を始めてしまうケースがあります。この場合は肉体関係の証拠がない場合でも、不貞行為があったと判断されるのが一般的です。
3)ラブホテルに長時間2人きりでいた
旅館やラブホテルなどに別の異性と2人きりで長時間いた場合は、 客観的な判断として不貞行為があったとみなされます。ただし、2人きりであった事と長時間滞在していたことのはっきりとした証拠がなければ認められません。
不貞と浮気と不倫では何が違う?
「浮気」と「不倫」と「不貞」一見同じように思えますが、一体何が違うのでしょう。それぞれの定義について解説します。
● 浮気とは?
「浮気」という言葉は広義の意味でよく使われます。まず当事者が未婚であるか既婚であるかは問われません。婚約者など決まった人がいるにも関わらず、別の異性と交際する場合も浮気になります。
また、彼氏と彼女の関係性でもよく使われ、男女問題以外でも使われます。 このように浮気という言葉には「単なる気分の浮つき」に近い軽い意味を持つのです。
● 不倫とは?
不倫の本質的な意味は、「倫理から外れた行為」や「人の道から外れたこと」を表します。
近年になってからは、特に結婚制度から外れている男女関係を指すようになってきました。
不倫の一般的に理解されている意味は、配偶者がいる人が配偶者以外の人と恋愛や性的関係を持つこと、あるいは未婚の人が配偶者のいる人と恋愛や性的関係になること、を指します。
● 浮気や不倫と不貞の違いとは?
浮気や不倫と不貞との大きな違いは、肉体関係があるかどうかです。浮気や不倫の場合は肉体関係が絶対の条件ではありません。
また、不貞は法律上の離婚事由となります。つまり不貞が発覚すれば離婚を請求できるのです。浮気や不倫だけでは離婚を請求することができません。 男女の関係(性交渉)が認めらる不貞でない限り、法律上の離婚原因として認められないのです。
法律上、不貞行為となる基準は何?
法律上で不貞行為となる判断基準は何なのか ?それぞれのケースについて解説します。
法律上で不貞行為と判断されるケース
男女関係があるだけでは「不貞行為」とは認められません。判断基準としてそこにしっかりとした本人の自由意思があることです。
性交渉が、たった一回でもあれば不貞行為にあたりますが、それは証拠によって証明する必要があります。また 売春や回春もれっきとした不貞行為にあたります。
ただし。強制性交等によって性交渉が行われたケースでは、被害者側に自由意志が存在しないので不貞行為とは言えません。不貞行為に当てはまるのは加害者のみです。
法律上で不貞行為と認められないケース
一般的なデートでのキスや抱擁、手を繋ぐだけでは不貞行為とは言えません。但し、そこに性的な関係性を推察できるだけの要素があり、婚姻関係を崩壊に導くような 交流があった場合は例外的に不貞行為に該当します。
性的な関係性や性交渉がない場合でも不貞行為に該当する可能性がある事例を以下に紹介します。
1)性的な関係性が推察できる要素がある場合
・ラブホテル街で抱き合ってキスをしていた
・ ワンルームマンションに数日間滞在し、外出時に体を密着して手を繋いでいた。
2)婚姻関係を崩壊に導くような 交流
不貞行為が疑われる相手が、既婚者との間に婚姻を前提とした交際をして、既婚者に対して配偶者と別居を迫ったり離婚を要求していた場合で、キスをしたことが認識されている事例。(平成20年12月5日、東京地方裁判所判決)
3)同性同士での性的な関係
不貞行為とは基本的に異性との性交渉が前提で、同性同士での接触だけは不貞行為に当たらないというのが一般的な考えです。
ただし、同性と性的関係を結んでいる場合は、 法律上で不貞行為に当てはめる可能性があります。
「継続し難い重大な事由」(770条1項5号)」
もし、配偶者が不貞行為をしている?と感じたらやるべき2つの行動
夫(妻)のスマホにロックがかかっていたり、急に洋服を買いだしたり、 また仕事の帰りがいつも遅くなるなど、普段の様子と違うことで「もしかしたら浮気をしているのではないか」と疑った時は、慌てないでまずは証拠を集めることです。
それからゆっくりと今後の事を考えましょう。 ここではまず不貞の疑いを持った時に初めにやるべき2つの行動について解説します。
まずは不貞行為の証拠を集める
不貞行為を行ったものに慰謝料を請求するには、不貞行為の事実を証明する確実な証拠が必要になります。 当事者に気づかれてしまうと証拠隠滅される可能性が大きいので、知られる前に十分な証拠を集めておきましょう。
配偶者に対して慰謝料を請求する時に必要になる証明は、不貞行為が存在した事実のみを証明できればいいのですが、不貞した相手に慰謝料を請求するケースは、不貞行為の事実だけでなく、 不貞した相手が「故意」なのか「過失」なのか証明する必要があります。
既婚者であり、不貞行為とあると認知していた事実を証明できる物として、(誓約書、録音、メールや SNS) などが証拠になります。
しかし、後から「離婚されては困るから嘘をついた」、「あの時は怖くて不貞行為を認めが、本当は何もしていない」などと言い逃れされてしまう可能性もあります。そのため証拠としては以下のような客観的な証拠を集めるようにしましょう。
【不貞行為の証拠になるもの】
不貞行為 | 証拠となるもの |
不貞相手との宿泊を推察できる写真 | (日時と顔が判別できること) |
ラブホテルに入る所、出る所の写真 | (日時と顔が判別できること) |
肉体的な関係を推認できる会話の記録 | ( SNS ・メール・手紙など) |
肉体的な関係を推察できる写真・動画 | ( 性行為中の写真など) |
【故意過失の証拠になるもの】
故意、過失の事実 | 証拠になるもの |
既婚者であることを認識している事実を示会話や記録 | ( SNS ・メール・手紙など) |
不貞の相手が結婚式に列席していた事実 | ( SNS ・メール・手紙など) |
不貞相手は過去に配偶者と同じ会社に在籍していた。 | (知人友人などからの証言) |
不貞相手は夫婦の共通の知人である。 | (周知の事実、友人なども証言 ) |
不貞行為による慰謝料ってどのくらい?相場や増額の要素
不貞行為をされた妻(夫)が不貞行為をした側に慰謝料を請求する場合、その慰謝料の金額の相場や、増額できる要素や条件は何なのでしょうか?
慰謝料の相場は50万~300万円
判例をみると慰謝料の金額を算定する際には 色々な事情を考慮して算定されます。以下がその具体的な事情の例です。
考慮される要素 | 内容 |
夫婦関係 | 年齢や婚姻期間、子の有無、職業や収入など |
不貞行為をしていた期間中の夫婦仲 | 破綻状態かそれとも円満だったか |
不貞行為の中身 | 期間や交渉回数、妊娠・中絶・出生の有無、 |
配偶者や子供が不貞によって受けた影響 | 離婚した、子供がいじめにあった等 |
考慮される要素の中で一番大きな影響を与えるのが、不貞期間の長さと被害者が受けた被害の大きさです。 中でも離婚した場合の損害が最も大きいと考えられます。この時の慰謝料の相場が100万円から300万円程度で、離婚しなかったケースの相場が50万円から100万円です。
慰謝料が増額される事例
慰謝料の増額の要素には様々なものがあります。 ここではその代表的な事例を紹介します。
1)不貞行為の期間が長い(2年以上)
2) 性交渉の回数が多い(数十回 )
3) 婚姻期間が長い(15年以上)
4) 夫婦間に幼い子がいる
5) 不貞行為が原因となって別居や離婚になった
6)早いうちに不貞を辞めるように伝えたにも関わらず関係を継続させた
後で後悔しないために、まずは弁護士に相談しよう!
明らかに不貞行為をしたにも関わらず「性的な関係はない」と主張されて、 確実な証拠を提示できないために泣き寝入りした事例はいくらでもあります。
怒りに駆られて不貞をした相手を、ただ責め続けるだけだけでは何にもなりません。まずは冷静になってその道のプロである慰謝料請求を得意とする弁護士に相談しましょう。
ウェブページで無料の相談を受け付けている弁護士さんもいますので、まずは相談するところから始めましょう。