アブラムシは、植物や野菜に寄生しダメージを与える害虫です。早期から駆除を視野に入れておかなければいけませんが、そのためには実態や対策方法を知らなければいけません。
日常的な範囲に生息する害虫にあたるため、大きな被害を出さないためにも、参考にしてみてはいかがでしょうか。
目次
そもそもアブラムシとは?
大事に育てている植物や野菜を見ると、びっしりとアブラムシがとりついているのを見かけたことがあるでしょう。その量に驚いてしまうことも少なくありません。
茎や幹だけではなく、葉の裏まで大量のアブラムシが付いていると、どのように駆除するべきか考えてしまうのも当然です。
アブラムシとは、カメムシ目のアブラムシ上科属する昆虫です。1匹だけで見かけるのはあまりないのは単独行動をするような昆虫ではないからです。
集団で植物に取りついて口針を差し込み、植物内部の養分を吸い取ります。非常に厄介な昆虫で、体長が小さく1匹では見つけられない場合も出てきます。
体長は2mm~4mm程度のものが多く、色も緑から赤、黒っぽいもの、黄色いタイプまでさまざまなものを見かけるでしょう。
中にはもっと小型のものもおり、その色から全く気が付かない間に繁殖しているケースも見られます。これだけ種類がいる理由は、世界中に3000種類以上もおり、日本にも700種類は存在していることが確認されているからです。
アブラムシが被害を出す理由
アブラムシは体の表面が柔らかく、体の後方に角状管と呼ばれる器官を持っています。この管を植物に差し込み、汁を吸い上げていくのです。
それだけでも被害が出ますが、ウイルスを媒介することもあり、植物がどんどんと侵食されていきます。さらにこの状態の植物からほかのアブラムシが汁を吸い上げるとき、ウイルスを持っていくのです。
ほかの植物からも吸い上げようと管を指した時に感染が広がるため、広範囲に被害を出します。
厄介な特性として、アブラムシの仲間は自分の身が危険にさらされると、角状管から警戒ホルモンを分泌し仲間に知らせるのです。集団で見かける割に、なかなか駆除できない理由となっています。
どこからともなくやってくるアブラムシですが、発生の要因として窒素分があげられます。肥料を挙げて育てる植物が多い中、窒素分が多すぎることでアミノ酸が多くなるのです。このアミノ酸を狙ってアブラムシが寄生することが考えられます。
育てている植物の感覚も影響しているといわれています。株の間が狭く密集した状態では、風通しがよくありません。日当たりも悪く、アブラムシにとって格好の生育環境ができあがるのです。
1匹だけで見れば、決して強くはない昆虫なのにもかかわらず、なかなか駆除できない理由は、植物の育て方に問題があるともいえるでしょう。
なぜここまで大量に沸いてくるのか
アブラムシはかたい殻など体を守る部分がなく柔らかい事から、極端な温度変化に耐えられる構造を持っていません。寒さにも耐えられないため、穏やかな気候のときに繁殖します。
メスのみでも繁殖できる特徴の単性生殖の昆虫です。これが大量に爆発的に増加する時期がある理由になります。秋の終わりごろには、オスが生まれるようになり、卵を産み付け越冬できるのも特徴です。
寒い時期に入る秋頃になると羽のある生殖虫を生み出し、次の場所へ移動し卵を産み付けます。これでさらに被害は広がっていくのです。
非常に高い繁殖力を持っており、短期間で一気に増殖します。実は1回で出産する卵の数は多くありません。それよりも問題は10日で成虫になる成長速度の速さです。
種類によっても違いますが、1日で5個程度の出産を繰り返すことも大きな問題となるでしょう。生存率も高い方法であり、駆除しても少しずつ卵が増えていき、減っていかない理由なのです。
気が付くとあっという間に増えてしまうのもアブラムシの特性であり。予防と駆除のための撃退方法が重要です。徹底的にやらなければ、対応できなくなってしまいます。
無農薬でアブラムシを駆除する方法
アブラムシを駆除する方法はいくつかあります。その中でも農薬を使わない方法は、アブラムシの持つ特性を利用しながら駆除撃退します。
自然の摂理も利用する駆除方法は、化学的な方法をとらないことから、植物や人間にも土壌にも影響が少ないため、収穫するための野菜にも安全な方法になるのです。
直接個体を取り除き駆除する
最も古典的な方法ですが、アブラムシを1匹ずつ手で取り除けば、やがて繁殖できなくなります。問題は1匹ずつになればとにかく手間が掛かり、大量発生してからでは追いつかなくなるのです。手間を考えると、発生から早期の段階でしかできません。
除去する方法もいろいろとあります。代表的なのは、割りばしで1匹ずつつまむ方法です。確実に除去できますが、ある程度大きくなければ判別できませんし、なによりも時間が掛かります。
1回駆除するだけでは済みません。繁殖速度が速いため、数日間は連続して駆除しないと根本的な対応ができないのです。
粘着力の弱いテープを使って直接植物から駆除する方法もあります。直接除去するよりも効率的で、大量にいても対応はできます。ただし、注意しないと植物自体を傷つけてしまう可能性があり、適度な粘着力を選ぶことが大切です。
歯ブラシを使って擦り落とす方法もあります。駆除するというより、かき落とす方法です。もちろん、その後の処理も必要となることを忘れてはいけません。落としたままではまた戻ってきます。こちらも作物を傷める可能性があるところに注意しましょう。
天敵であるテントウムシで駆除
アブラムシの最大の天敵はテントウムシです。1日あたり10匹を捕食するとも言われており、1日5匹ほど生むアブラムシの速度を上回ります。これが重要なポイントで、何もせずにどんどん食べていってくれるのです。かなりの大食で、びっくりするほどアブラムシを捕食します。
しかし、テントウムシはアブラムシほど大量に繁殖はしません。アブラムシに対して増殖する速度に負けないだけの数をそろえなければいけません。ある程度の期間の余裕をもってテントウムシを放たなければいけないのです。
この条件からも、アブラムシ発生の初期の段階に効果を上げやすいほう方法といえます。即効性もないので、大量繁殖してからでは間に合いません。テントウムシ地震が繁殖する環境を作る必要があるのもデメリットです。
邪魔をしてくるアリの問題もあります。アリはアブラムシが出す排泄物をもらい、代わりに天敵から守るのです。つまり、SPのような役割をするといっていいでしょう。テントウムシもアリに邪魔をされます。アリの駆除も考えておかなければ、効果が半減するのです。
注意しなければいけないのが、テントウムシの中でもアブラムシを捕食せず、植物を食べるタイプがいるところです。テントウムシダマシと呼ばれる種類で、葉や茎を食べてしまいます。
駆除するどころか被害を広げる結果となるので注意しなければいけません。このテントウムシダマシは、日本にもいくつかの種類が確認されているため、背中の星の数が28個など、極端に多いタイプは駆除対象です。
窒息させる
アブラムシも生き物です。呼吸して生きていることには違いがありません。一定範囲内にいるアブラムシを窒息させれば大量に駆除できるのです。
方法はいくつかありますが、牛乳を吹きかける方法が家庭の中でもよく使われてきました。牛乳を水で薄めて霧吹きで吹きかけるだけと、どの家庭でもできる簡単な方法です。この方法が効果的な理由は、牛乳が乾燥して膜ができ固まるためで、吹きかけられたアブラムシが呼吸できなくなるのです。
ポイントは植物に対しても牛乳の膜ができるため、吹きかけた後は必ず洗い流します。念入りに洗い流さなければいけないため、アブラムシにかかった牛乳まで落としてしまうかもしれません。大量発生した状態を相手にすると、牛乳を吹きかける範囲も大きくなり多くの手間も必要です。
牛乳の用意やスプレーボトルの管理も含めると、あまり効率的な方法ではなくなります。窒息するのも成虫だけとなるので、何日か連続で休まず繰り返していかなければいけません。他の方法と同様に初期の段階で使える方法です。
似たような方法に石けん水をかける方法もあります。台所用の石けんを水で薄め、霧吹きで吹きかける方法です。牛乳を使うのと同様でお手軽である反面、しっかりと洗い流さなければいけないのはあまり変わりません。
石けん水は固まるまで時間がかかるうえ、必ず窒息するとも限らないところが欠点です。ただし、牛乳のように腐ったりしにくいため、夏場でも臭いが出たりする心配はありません。効率的な使い方を考えると、やはり初期の段階で使う方法で、毎日吹きかけて絶対数が増えないようにコントロールしなければいけません。
寄ってこなくする忌避剤
忌避剤は、アブラムシ自体が寄生しないようにする目的で使われます。殺虫剤などの薬剤とは違い、害のないものを使うところが特徴です。いくつかの種類が販売されていますが、ほかの害虫除けにも使えるため、総合的に守れるようになります。
・木酢液
色々な種類がありますが、木酢液はよく知られるようになりました。木炭を作るときに出る水蒸気を冷やしたもので、ホームセンターなどで簡単に手に入ります。アブラムシなどの害虫を忌避するのによく使われますが、これは独特の臭いがあるからです。
つまり、時間がたち臭いがなくなると効果を発揮しません。定期的に散布しなければいけない理由です。ただし、掛け過ぎれば樹木にダメージを与えるケースもあるので、適度に散布する必要があります。
木酢液は植物の成長も促すといわれており、土壌の改善にも役立つとされてきました。余ったものは土に流しても問題ありません。ただし、濃度が高すぎると逆効果になることもあるので注意しましょう。
木酢液は基本的に無害ですが、中にはほんのわずかな量のホルムアルデヒドを含んでいる場合があります。天然の木材を使って作れば発生しませんが、合板などを利用して作られているケースもあるため、完全には無害ではないことを留意しておいたほうがいいでしょう。
・ニームオイル
インドで古くから自生してきたニームと呼ばれる樹木の種子から採ったオイルです。古くから虫除けに使われてきましたが、ヨーロッパではシャンプーやスキンクリームにもつかわれる身近な素材だったりします。
ニームが使われる理由は、過去にアフリカでイナゴによる大被害が起きたときがありました。そのときになぜかニームだけが被害を受けずに残ったのです。そこで研究がスタートしたという逸話が残っています。
ニームは希釈してスプレーボトルで吹きかけますが、メーカーによって倍率が異なるため注意が必要です。忌避するだけではなく、害虫の食欲を阻害するため、餓死してしまいます。
しかし、脊椎動物や土中有益動物、肉食昆虫には毒性を示しません。つまり、人間や土の中にいるミミズなどには影響がないのです。さらに肉食であるテントウムシにも被害が出ません。
ニームを使う場合には、忌避剤としてアブラムシが発生する前から使う方が効果を上げます。食欲を抑えるとしても、徐々に被害が減るだけで時間もかかるからです。世界的に使われてきた忌避剤であり、余ったものは木酢液と同様に土に流せます。
薬剤で強制的にアブラムシの駆除
薬剤を使わない方法は安全ですが、大量にアブラムシが発生すると対応が間に合なくなり、堂々巡りになります。作物の被害が大きくなる前に駆除しないといけない根本の部分から、薬剤での強制的処理も検討するべきです。
病気の予防や治療もできる殺虫殺菌剤
アブラムシの対策として使われるだけではなく、他にもメリットを生み出す殺虫剤があります。悪影響を出す菌も同時に処理できるタイプで、健康な状態を維持するのにもピッタリです。幅広く利用できるのがメリットになるでしょう。
殺虫殺菌剤は、植物の種類によって分けられています。植物用と野菜用に分けられているものもあるため、どこに使うのか確認が必要です。
病気の予防や治療に使えるものは1か月など長期的に効果をあげられるため、連続で使用しないでも済みます。長期的な効果があげられるだけに、野菜用は十分な注意と確認が必要です。
夏野菜専用の殺虫剤でアブラムシを駆除
夏野菜専用の殺虫剤も販売されています。夏はアブラムシが繁殖しやすい時期です。それだけに夏野菜はターゲットになりやすい問題を抱えます。この時期のトマトやキュウリ、ナス、ピーマンに対応したものを選ぶのも大切です。
果樹のアブラムシ対策にも使えるものが販売されており、持続性の高いものを選ぶと噴霧回数も減らせます。月に1回程度で対応できるものが多いので、頻繁に使う必要はありません。使う回数が少ないほうが、殺虫剤としてのリスクも減らせます。
年間通して使える殺虫剤
ある時期限定ではなく年間通してアブラムシが発生する場合もあります。家庭の室内に置かれている観葉植物などは、屋外よりも温度が高く室温も下がりにくいので、一年中発生する可能性があるのです。
1回アブラムシが発生してしまうと、他の樹木にも感染する可能性が高いことから薬剤で強制的に除去する選択がとられます。手をこまねいていると、あらゆるものに移ってしまうからです。
こちらも植物の種類によって使えるものが分けられています。殺虫剤によるダメージを減らすためにも、効率的な使用を考えて適切な種類を選ぶ必要があるでしょう。
効果が持続するのが基本ですが、卵には効果がない場合も出てきます。噴霧して終わりではなく、継続して観察しながら被害が広がらないよう、隙間を開けたりの措置も必要です。風通しを良くして上げるだけでも違います。
厄介なアブラムシ類のほかハダニ類にも
植物にとって厄介なのはアブラムシだけではありません。ハダニなども植物の生育に大きな影響を与えるため除去したい害虫です。特に夏から秋にかけて発生するのははどれも厄介な害虫となるため、効率的に駆除し発生を抑制しなければいけません。この対策として使われるのがマラソン乳剤などの薬剤です。
マラソン乳剤は、白濁しており牛乳のような見た目を持った殺虫剤です。観葉植物などにも使えるもので、正しい希釈で濃度を間違わなければ植物への影響もそこまで高くありません。
ただし、年間通して使える殺虫剤のように葉っぱの裏まで浸透しません。自分で葉をひっくり返して散布する必要があります。流れ落ちやすいのも欠点となるため、展着剤を混ぜて使うのも方法です。
界面活性剤を利用した薬剤で、付着性を高めてくれます。家庭園芸用の小さなボトルもホームセンターなどで手に入るので、利用しやすいところもメリットです。
室内などに置いてあると、暖かい環境の中で越冬することが考えられます。こうした殺虫剤を使ってでも、越冬させて長期間の被害を出さないことが大切です。
駆除をするなら徹底した対応を
アブラムシの駆除は、徹底的にすることが大切です。繁殖の早いアブラムシは、少し残すだけでもあっという間に増えていきます。今日駆除しても、明日卵が孵化するかもしれません。
卵の状態に対応する方法が少ないことも一因です。徹底して駆除を続けていかないと、いつまでたっても数を減らせないどころか、被害は大きくなります。
薬剤を使わない方法は安全ですが、結果的にアブラムシの繁殖を許す可能性も理解しなければいけません。他の植物に影響を与えることも理解して、見つけた段階で徹底的な駆除が必要です。
そんなときには、薬剤を使って駆除してから安全な予防方法に切り替える方法もあります。手をくれになり手が付けられなくなる前に、しっかりと対策していきましょう。