不倫は違法性があるのでしょうか? 当然ですが不倫が発覚すれば、大きなトラブルに発展し配偶者は怒り心頭になります。場合によっては裁判になり、慰謝料を請求されますが、犯罪者になるわけではありません。
不倫行為は、法的な視点ではどう見れば良いのでしょう。不倫が違法と判断される ケースをや具体例を紹介しながら解説します。
目次
そもそも「違法」とは、その定義は?
「違法」とは、「法律や規定にそむく行為」を意味します。簡単に言ってしまえば「法律に違反する」ということです。
例えば、不倫や浮気が発覚しても 個々の内容によって法律に触れるケースもあれば、触れないケースもあります。
そもそも不倫行為の解釈には個人の感覚によって異なる面があるので、不倫が違法に該当するのかを論じるには、 どの法律の背景がベースになっているのかを明確にすることが必要です。
不倫は法律上で「不貞行為」のこと
「不倫」を辞典で調べると「人の道にそむくこと」とあり、古くは道徳から外れることを意味しましたが、戦後からは「道徳的に許されない恋愛」という意味をもつようになりました。
現在使われている一般的な意味としては、「配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」という意味で使われています。しかし、不倫は法律用語ではなく代わりに「不貞」という言葉を用います。
つまり、不倫とは法律上で言う「不貞行為」のことで、「配偶者以外の異性と性交渉を持つこと」です。従って恋人が他の異性と性交渉をしたケースは不倫にはあたりません。
不倫(不貞行為)は犯罪なのか?
不倫は犯罪なのでしょうか? まずはそこから考えていきましょう。 犯罪として成立するか否かは、不倫が法律として刑罰の対象になるかどうかにかかっています。
過去に遡ると戦前の日本では、不倫はれっきとした犯罪と認識され、「姦通罪」 という刑罰がありました。 姦通罪を犯すと刑法により懲役刑(2年以下)が科せられました(明治40年時時点)。
姦通罪とは、婚姻して夫のある妻が、夫以外の者と性交渉をした場合に成立する犯罪で、その妻と不倫した男性の両者が刑罰を受けるという罪でした。あくまでも告訴権者は夫で、妻側にはありません。
つまり、夫が妻以外の女性と肉体関係になっても、犯罪にならない不平等な法律でした。
しかも、夫の不倫相手の女性が既婚者だった場合、 その女性の夫が告訴を望まなけらば起訴されない(親告罪) なので、不倫をされた妻は泣き寝入するしかありません。
実際のところ、戦前から1960~1970年代にかけての高度成長期くらいまでの日本では、収入の高い男性が妻以外にお妾さん(愛人)をもつ例が珍しくなかったようです。
しかし、 法律的には戦後の日本国憲法の制定によって、男女平等が定められ姦通罪は廃止となり、現在では不倫は犯罪行為とはされず、刑法の中では違法にはなりません。
しかし、不倫に対する扱いが厳しい国も世界には存在します。イスラム圏のような厳しいところでは、死刑という厳しい処罰で対応する国もあります。
なぜ、不倫(不貞行為)が離婚理由となるのか?
離婚理由の第1位は「性格の不一致」ですが、 異性関係(不倫を含む)の問題も離婚理由の上位に常に上がっています。 おそらくこの記事を読んでいる方も、常識やモラルからいっても不倫が離婚理由にあがるのは当然と思われるでしょう。
しかし、不倫が離婚原因となるのは常識やモラルだけでなく、民法にしっかりと定められています。 民法では、夫婦は互いに相手に対して 他の異性と性交渉をしない義務(貞操義務)があるとしています。
本来結婚は当事者間の契約であり、貞操義務はその中でも夫婦の基本的な義務です。このように不倫は刑法による処罰対象ではありませんが、民法によって離婚請求や慰謝料の請求などが可能になりました。
貞操義務に反する不倫(不貞行為)は、違法である
夫婦はお互いに貞操義務を負担している反面、 配偶者に貞操を要求する権利があります。 仮に夫婦のうち夫が不貞行為をした場合、妻が持っている「夫に貞操を守るように要求する権利」が侵害されたことになるでしょう。
民法では他人の権利や利益を侵害して損害を発生させたものは、損害賠償義務を負担するとして、これを不法行為責任といいます。
不貞行為をした者は、配偶者のもつ貞操要求権利を侵害し精神的な損害を与える行為と評価され、精神的な損害賠償となる慰謝料の支払い義務を負うのです。
この慰謝料の支払い義務を発生させたことは、 相手に対しての権利侵害行為という意味で民法上違法となります。
違法性がある不倫(不貞行為)の具体例
ここでは、具体的に違法な不倫と判断される具体例にを、いくつか挙げていきます。
肉体関係がある
この記事でも述べているように、明らかに肉体関係(性交渉)が成立している場合は法律上の不貞行為に該当する違法な不倫であるといえます。民法上違法な不倫であるので、離婚請求や慰謝料の請求は認められます。
しかし、 実際に離婚請求や慰謝料の請求をする場合には、肉体関係が 確実に成立していたことを証明できる証拠が存在しなければなりません。 事前に十分な不倫(不貞行為)の証拠集めをすることが大事です。
同棲している (同棲していた)
不倫をしている場合 、 不倫期間が長くなると不倫相手と同棲を始めてしまうケースがあります。同棲している場合、たとえ肉体関係が成立していることを証明できないケースでも 違法な不倫であると判断される可能性が高いです。
現在、不倫相手と同棲している場合や、過去(婚姻期間中)に同棲していた形跡がある場合は確実な証拠を掴んでおきましょう 。
2人きりでラブホテルや旅館に長時間いた。
配偶者が異性と2人きりでラブホテルや旅館などの宿泊施設に長時間いたことが分かった場合には、 その客観的な事実によって民法上の不貞行為が成立すると考えられます。つまり違法な不倫であると認められるわけです。
不倫の慰謝料請求のためには証拠集めが必須である
配偶者の不倫を証明して慰謝料を請求するためには、何と言っても不倫を証明できる確実な証拠集めが鍵です。まずは、具体的な証拠になり得るものを下記の表に参考として提示します。
不倫の証拠になるもの一覧
証拠 | 内容 |
証拠写真 | ラブホテルに入る様子・性行為など |
音声・画像・映像データ等 | 不倫相手と行った旅行の画像や動画 、不倫相手との電話音声など |
クレジットカードの利用明細やレシート | ホテル・宿泊施設などの利用明細 |
Suica や PASMO の利用履歴 | 駅の乗降記録など |
LINE ・メール・手紙 | 肉体関係が裏付けられる内容であること |
ブログ・ SNS | 不倫関係が想定できる投稿 |
手帳・メモ・日記 | 不倫相手との交際記録 |
GPS | 旅館やラブホテルに行った記録 |
住民票のコピー | 不倫相手と配偶者が同棲している記録 |
妊娠・中絶を証明できるもの | 妻側が不倫している場合の証拠 |
探偵・興信所の調査報告書 | 不倫の実態がわかる証拠 |
不倫現場の写真など、不倫をしていることが客観的に証明できる内容ほど効力を発揮します。 探偵や興信所でしか集められない証拠もありますが、 LINEやメールが日常生活のツールとなっている現代では、 自分で決定的な証拠を集めることも可能です。
不倫相手とのLINEやメールでのやり取りは、他の証拠に比べて集めやすい上に十分な客観的証拠になりますので、 自分で証拠集めをするならおすすめです。
とにかく、離婚請求・慰謝料請求をしようとするときに十分な証拠を確保していなければ、不倫関係を証明できず泣き寝入りすることになります。
離婚請求・慰謝料請求をする前に十分な不倫の証拠を集めることが鍵になりますので、配偶者の不倫が発覚したら感情的にならず冷静に、まずは客観的な証拠を集めるようにしましょう。
もし不倫された、不倫してしまったらどうする
もし実際に自分が不倫された、あるいは不倫をしてしまったことが配偶者に分かってしまった場合、 どう対応したら良いのでしょうか?
どちらの場合であっても、感情的になって軽率に自分だけで行動するのはやめましょう。 安易に行動することで次のようなリスクが発生する可能性があります。
<感情的になって軽率に動いてしまった場合のリスク>
1)配偶者に不倫された場合
● 感情的になりすぎて話し合いにならない
● 婚姻関係は破綻しているので慰謝料を支払う義務はないと言われる
● 携帯やメールの履歴など証拠となるものを消されてしまった
2)自分が不倫したことが配偶者にわかってしまった場合
● 高額な慰謝料の支払い認めてしまった
● 受け入れなくて良い要求まで受けてしまった
● 解決までの時間が膨大なかかり、金銭的にも精神的にも大きな負担になった
軽率に行動してしまうと、上記のようなリスクが発生する危険があります。 全て自分で対処しようとしないで、まずは弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士に相談することで、手間や時間、精神的な負担が最小限に抑えられるだけでなく、請求された慰謝料を適切な金額まで減額できることも可能です。 できるだけ早く相談する方が弁護士側としてできる対策も増えるので、まずはすぐに相談することをお勧めします。