離婚するときによく聞く「財産分与」。財産がもらえるということは分かるけど、詳しくは分からない…そんな人のために今回は財産分与を分かりやすく解説していきます。
離婚するときに知っておきたい財産分与について基本を理解しておきましょう!
目次
財産分与とは
「財産分与」とは、離婚するときに夫婦間の財産の格差を調整する制度で、婚姻生活のなかで夫婦が積み重ねてきた財産を、分けることをことをいいます。民法768条では、「離婚の際には、相手方に対し財産の分与を請求することができる」と定められています。
よく混乱してしまうのが慰謝料ですが、慰謝料は相手の精神的な苦痛を補うために支払うお金です。基本的な財産分与(清算的財産分与)はどちらが悪いということは関係ありません。夫婦間の財産を分けるものです。
夫婦間の財産を分ける財産分与は、法律で認められている権利なので離婚のときに夫婦間で話し合っておく必要があります。もしも、話し合いをきちんとせずに離婚してしまうと、もらえるはずの財産をもらえない可能性も考えられます。
財産分与の対象になる財産
財産分与の対象になる主な財産は以下の5つです。
・現金・預貯金
・不動産
・株券、出資金など
・生命保険
・退職金
現金・預貯金
現金や預貯金は、夫婦が婚姻中に形成していれば夫婦のどちらの名義であっても財産分与の対象です。基本は結婚してから別居したときまでが対象になります。財産分与の対象かどうかについては名義ではなく実質的に判断されます。
子供名義の預貯金は、子供のために両親が積み立てていた場合は財産分与の対象です。(お小遣いや進学祝いなどは対象外)
相手の資産隠しには注意しましょう。資産を隠されてしまうと公平な財産分与がされません。相手が通帳を見せてくれなければ、弁護士などに依頼して開示請求を行いましょう。
不動産
不動産も財産分与の対象となります。不動産はその性質上価値が変動するので注意が必要です。購入したときの価格ではなく、財産分与するときの価格で分与することになります。不動産を売却していったん現金にしてから財産分与するというケースも多いです。
株券、出資金など
株券などの有価証券や投資信託も財産分与の対象ですが、不動産と同じくその日によって価値が変動するので財産分与が難しい財産です。価値の評価は別居時ではなく、離婚が成立したときとされています。
原則として、婚姻前に保有したものや相続で得たもの財産分与の対象にはなりません。
生命保険
積立型の生命保険は、財産分与の対象となります。積立型の生命保険は金融資産としての性格を持っています。ただし、掛け捨て型の生命保険は財産性がないので財産分与の対象ではありません。解約するときに返戻金を受け取れる生命保険の場合は、基本的に解約返戻金の予定額が評価額として財産分与の対象になります。
退職金
退職金は”給与の後払い”という性質があるので、退職金がすでに支払われている場合には財産分与の対象になります。まだ支給されておらず、支給も先になるというケースなどでは財産分与の対象にならない可能性があるので確認しておきましょう。
借金は財産分与の対象?
借金は財産分与の対象にはなるものとならないものがあります。
教育ローンや住宅ローンなどの結婚生活の中で生活をするうえで作った借金は財産分与の対象となります。一方で、ギャンブルなど一方が個人的な理由で作った借金は結婚生活のために必要だったとは考えられないので、財産分与の対象外です。この場合は、プラスの財産から借金を差し引いて計算します。
財産分与の種類
財産分与には次の3種類があると言われています。
・清算的財産分与
・扶養的財産分与
・慰謝料的財産分与
それぞれ詳しく解説していきます。
清算的財産分与
「清算的財産分与」は、文字の通り夫婦の財産を精算することで行われる財産分与を指します。つまり、夫婦生活の中でこれまでに築き上げた財産を分配するということで、財産分与は基本的にこの清算の意味で使われます。
”夫婦生活の中でこれまでに築き上げた財産”とは「共有財産」や「実質的共有財産」のことです。「共有財産」は、不動産などの婚姻中に2人でお金を出し合って購入した共有の財産で、「実質的共有財産」は、預金や株式、債券などの名義は一方であるが、実質的には共有の財産であるものを指します。(例外的に単独所有であると認められる場合もあります。)
扶養的財産分与
「扶養的財産分与」は、夫婦どちらかの経済力が弱く離婚してから生活が困窮してしまう可能性がある場合に、もう一方が一定の期間生活を補助を約束するものです。幼い子供を育てなければならないために、収入が少なかったり、専業主婦をしていて仕事にすぐ就くことが難しい妻に対して、夫から支払うケースが多いです。
その他にも、離婚のときに夫婦のどちらか片方が病気を患っていたり、高齢で長時間の仕事に就くことが難しい場合などにも認められることがあります。簡単に説明すると、稼ぎのある方が稼ぎが少なくて生活に困っている方を助けてあげるという制度です。
慰謝料的財産分与
「慰謝料的財産分与」は、慰謝料による財産分与です。清算的財産分与と異なり、慰謝料的財産分与はどちらか一方に問題があるので、財産分与とは性質が異なります。
お互いの財産を分ける財産分与と慰謝料は、原則として別々に算定するものですが、慰謝料と財産分与を明確に区別せずにまとめて「財産分与」とすることがあります。
財産分与の算定方法
それでは、実際に財産分与を行うと場合、どのような算定方法で行われるのでしょうか?財産分与の基本的な考え方は「2分の1ルール」です。
財産分与は2分の1が基本
財産分与は「2分の1ルール」と呼ばれる基本的な考え方に則って行われます。結婚してから離婚するまでに夫婦で築いた財産の財産分与は、原則的に割合はそれぞれの収入に関係なく2分の1です。
2分の1ルールの例外
原則として財産分与は夫婦間の財産の2分の1で算出しますが、例外となるケースもあるようです。例えば、結婚生活の中で片方の浪費が多すぎた場合、財産分与の割合が修正されるなどの対応が取られることがあります。
財産分与に困ったら専門家に相談しよう
財産分与については、離婚から2年が経過すると家庭裁判所に申立てができなくなってしまうので注意が必要です。家庭内で解決できない場合は家庭裁判所を介しての裁判になります。
どうしたら良いか分からない人は、まず弁護士事務所などに相談しましょう。