離婚する際は相手側に親権を譲ったものの、「やはり親権を自分に取り戻し、子供を育てていきたい」と改めて考え直したば場合、離婚後であっても親権者を変更できるのでしょうか。
今回の記事では親権の変更を認める条件や、変更するための方法や手続きなどについて解説します。
目次
親権者変更・交代が認められるには
離婚後に親権者を変更する場合は、夫婦間の話し合いだけでは決められず、家庭裁判所に調停を申し立て、認めてもらわなければなりません.
なぜなら、当事者間の合意だけで親権の変更が可能になってしまうと、 親の安易な理由だけで子供の親権者が変わってしまう恐れがあり、それが子供の不利益につながる可能性が大きいからです。
親権の変更をするには、それなりの合理的な根拠が認められ、子供にとっての利益が改善される見込みがある場合に限られます。
親権者の変更が承認されるケース
離婚後の親権者変更が承認されるケースとして次の5つが考えられます。
<親権者の変更が承認されるケース>
● 親権者による育児放棄や虐待の事実
● 親権者が病気
● 子供の意思があるとき
● 子供の養育環境の大きな変化
● 親権者が死亡した
ここからはそれぞれのケースについて詳しく解説していきましょう。
1)親権者による育児放棄や虐待の事実
子供が親権者による育児放棄や虐待を受けているケースです。危惧されるのは、このような状況下で継続して子供の養育を任せると、子供の健全な成長が望めないということです。
このように根拠のある正当な理由があれば、親権者の変更が承認される可能性が大きいと言えるでしょう。
2)親権者が病気
親権者が重い病気になってしまった場合は、親権者変更を認めてもらえる確立が高いです。子供が全ての面で健康に育つには、親権者が健康でいることが重要だからです。
自分の病気の治療をしながら、子供を育てるのは困難であり、それは幼い子供ほど影響があります。 親が入院や通院を繰り返しているようだと幼い子供の面倒を見ることは難しいでしょう。
この場合の病気という意味には、精神的な病も含まれます。 このように親の健康問題で子供を健やかに養育することが難しいと判断できる場合は、 親権者の変更を検討すべきです。
3)子供の意思があるとき
子供自身が意思を持って、親権者の変更を希望することもあります。この場合、親権者変更が承認される場合が多いです。 ただし、このようなケースでは、子供の年齢によって対応に差が生じてきます。
なぜなら、「小さな子供は適切な親権者を自分で選ぶ判断能力がない」と考えられるからです。例えば幼稚園に通っている子供が「パパと暮らしたい」などと言っても、それで親権変更ができるとは思えません。
しかし、子供が15歳以上になると自分の周囲の状況をしっかりと把握していることが多いので、 子供の望む方向で親権の変更を認める場合もあります。
4)子供の養育環境の大きな変化
子供にとって大きな環境の変化は、成長に対して大きな影響を与えます。親権者が転職して多忙になりすぎて子供の世話が出来なくなったり、海外への転勤によって子どもの学校環境の変化や言語の問題などが発生したり、著しい環境の変化で大きなストレスを抱えることも考えられます。
このように子供に与える環境変化が大き過ぎるケースでは、 親権者の変更が承認される可能性が高いです。
5)親権者が死亡した
現在の親権者が亡くなっていた場合、自動的にもう1人の親の方に親権が移行されるというわけではありません。原則としては、「未成年後見人」という親権者の代理となる法定代理人が親権を受け継ぐことになります。
しかし、もう1人の親が「親権者変更の審判」の申立てを行い、認められた場合には親権者を変更することができます。
親権者の変更が承認される可能性が低いケース
離婚後の親権者変更が承認される可能性が低いケースとしては、次の3つが考えられます。
<親権者の変更が承認される可能性が低いケース>
● 再婚相手との生活を優先したいために子供を手放したい
● 離婚する際の親権者の決め方がいい加減だったので変更したい
● 相手が面会交流の約束を守ってくれない
子供のことを優先的に考えていない場合や、 自分勝手な思考にもとづいた親権者の変更は、基本的に受け入れられないと思っていいでしょう。
また、相手が「面会交流の約束を守ってくれない」など約束不履行の理由があっても、現在の子供の状況が問題ないなら親権の変更は難しくなります。
『親権者変更の申し立て』に必要な手続き・書類
親権者の変更をしたい時は、相手方の居住地の家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てます。ここではその際に必要な手続きや書類について説明します。
親権者変更の申し立ての時に必要な書類
まず、親権者変更の時に必要な書類は以下のようになります。
<親権者変更に必要な書類>
● 申立書
● 事情説明書
● 当事者目録
● 申立人の戸籍謄本
● 相手の戸籍謄本
● 子供の戸籍謄本
(子供の戸籍謄本はどちらかの親の戸籍謄本と同じです)
申立書には、なぜ親権者変更の申し立てをすることになったのか、その根拠となる理由を明確に記載することになります。この申し立て書類は相手方にも届くことになるので、相手を刺激するような内容は避けるようにしましょう。
そうしないと相手の感情を刺激することで、今後のスムーズな話し合いを難しくする可能性があります。
『親権者変更調停』の大まかな流れ
親権者変更調停での大まかな流れは以下のようになります。
<親権者変更調停の流れ>
① 調停の申し立て
② 第1回調停期日の日程調整を裁判所と行い、期日を決める
③ 第1回調停期日
④ 第2回目移行の調停期日 (必要な場合に応じて)
親権者の変更をしたい場合は、まず「親権者変更調停」を家庭裁判所に申し立てます。それを受けて裁判所で第1回調停期日が決定され、申立人と現在親権を持つ相手方の双方に呼び出し状が届きます。
期日に第1回調停が開催され、調停委員を介して申立人と相手方において話し合いがされますので、この時に申立人はなぜ今回の親権者変更の申立をしたのか、その事情を具体的に説明しなければなりません。
申立人と相手方双方の主張や状況などを踏まえた上で、どこかの段階で調査官(家庭裁判所)による調査が行われます。 調停を進行するにあたっては、双方の経済力や子供の療育状況、年齢、性別、現在の就学状況などが考慮する対象です。
また子供の年齢が15歳以上の場合は、子供本人の意見も必ず聞きます。また、15歳未満の子供であっても、その意見を考慮されることがあります。
親権者変更調停にかかる期間はどのくらい?
「親権者変更調停」の申し立てが開始されてから成立するまでにかかる期間は、どのくらいかかるのでしょう。
元夫婦の双方が合意し、裁判所においても親権変更が妥当であると認められた場合には、 調停がスタートしてからおよそ1か月で調停が成立します。
しかし、親権変更に対立が生まれている時は、調停を何回も行なったり、事実確認のために子供の意思や生活環境などを細かく調査したりする必要があり、長期化の傾向になります。
『親権者変更調停』は子供の意思がポイントになる。
親権者変更調停を進めるにあたっては、子供の意思が重要なポイントになります。 また、「子供の意思の確認」については子供の年齢が大きく影響してきます。
子供が15歳未満の場合はどうなる
子供の年齢は15歳未満、特に小さな子供の場合は「自分の意思をもって適切な親権者を選ぶ判断力が十分ではない」と考えられています。 ただし、10歳以上の子供ではその意思が考慮される場合もあります。
子供が15歳以上だったら「子供の意思」がポイントに
裁判所では親権者変更を決めるにあたり、子供の意思も尊重されます。実際、15歳以上の子供の場合では「子供の意思を尊重した判断が下されている」例が多くあります。
その理由は、「15歳以上の子供は物事の分別が十分に可能である」と考えられているからです。 親権は子供の健全な成長を最優先して判断すべきものであり、子供自身が親権者の変更を希望しているなら、それを認めるべきであるという考え方です。
子供が18歳以上・成人の場合はどうなるか
親権が発生するのは子供が成人するまでの期間です。子供が成人している場合は、そもそも親権が存在しないため親権者の変更もありません。
子供にとって必要だと思ったら諦めずに調停の申し立てをしよう
親権者の変更は誰でも認められるわけではありません。ハードルも高く、根拠となる理由を主張できなければ認められません。また子供の意思がどうなのかという問題もあります。
しかし、子供にとって絶対に必要だと考えている場合には、簡単に諦めずに勇気を持って 調停の申し立てを行いましょう。 不安が先行する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。