花粉症を治すことは可能?注目のおすすめ注射薬の特徴と種類を解説

花粉症の注射液による治療は非常に有効です。花粉治療の注射は大きく分けて2種類あります。1つが花粉症の根本的治療を目指すアレルゲン免疫療法で、もう1つがと花粉症のつらい症状を抑えるステロイド注射です。

また、最新の治療法も登場しています。2020年より重症、最重症のスギ花粉症の患者に限って使用できる注射薬が保険適用され、治療の選択肢は増えています。今回の記事では注射薬による花粉症の治療について、最新治療も含めて解説していきましょう。

目次

そもそも花粉症とは?

花粉症は、そもそも私たちの体を守ろうとする免疫機能による疾患です。異物である花粉が体内に侵入すると、なんとか異物を体の外に排除しようとする生体反応が起こります。 これがくしゃみ、鼻水などの症状として現れるのです。 

花粉症が発症すると花粉の刺激によって、体内のヒスタミンなどの炎症物質が放出され、神経細胞などにあるヒスタミン受容体と結合することでアレルギー症状がおこります。 

花粉症の治療法は3種類ある

花粉症の治療方法には「薬物療法免疫療法手術療法」の3種類があります。メインになっている治療法は薬物療法ですが、対症療法なので一時的に症状はよくなっても、翌シーズンの飛散時期が到来すると再び治療をする必要があります。

そこで現在、注目を集めているのが花粉症を根治するための治療法です。その代表格となる治療法が皮下注射による「アレルゲン免疫療法」で、次項から紹介するのは、このアルゲン免疫療法を含む注射薬による花粉治療についてです。 

アレルゲン免疫療法(減感作療法)による治療

別名「減感作療法(げんかんさ-りょうほう)」とも言われ、病気の原因となっている花粉(抗原)の抽出液で作り出した薬を、皮下注射により少しずつ身体に注入してアレルギー反応を徐々に弱めていく治療法です。

この治療法の良いところは、体質から徐々に改善していき花粉症を根本的に治せる可能性があるということです。治療方法としては週に1~2回の通院をして注射をしていき、治療期間としては2~3年かかりますが、70~80%の人に効果があります

アレルゲン免疫療法は、皮下免疫療法舌下免疫療法の2つがあります。どちらも保険適用が可能ですが、舌下療法が保険適用になるのはスギ花粉とダニのアレルギーのみです。そのためヒノキなどスギ以外の花粉症には、この皮下免疫療法の適応になります。

アレルゲン免疫療法は、治療終了後も長期間にわたる効果の持続が期待できるので、対症療法として使用されている薬の使用量を減らしたり、生活の質が改善されることも期待できます。

注意してほしいのは、ごく稀ではありますがアナフィラキシーという副作用が起こる可能性があるということです。アナフィラキシーが起こると、注射した後30分以内に息苦しさや腹痛、嘔吐、蕁麻疹(じんましん)などの症状が現れます。

ひどい場合は気を失うこともあります。基本的には効果も高く、安全性の高い治療法ではありますが、治療を受ける際には医師から副作用についてよく説明してもらい十分に理解しておく必要があるでしょう。

ステロイド注射による治療

花粉症のシーズンになる前に、「1回の筋肉注射を打つだけで、そのシーズンは花粉症が驚くほど楽になる」という話を聞いたことがありませんか?

これがステロイド注射です。ステロイド注射は、つらい花粉症の症状を抑え込むための治療法です。ステロイドには強力な炎症作用効果があり、また長期間体内に留まるタイプなので一回注射をすれば約2~3ヶ月くらい効果が持続します。

しかし、この治療法は重篤な副作用の可能性があるために、厚生労働省もホームページ上で注意を促しているところです。

アレルギー性鼻炎の専門治療を行っている医師が所属している「日本耳鼻咽喉科学会」では、アレルギー性鼻炎の治療に対して「ステロイド注射を使用することを推奨しない」との声明を出しています。

代表的なステロイド注射の副作用としては、「感染症・糖尿病・高血圧・緑内障・胃潰瘍・生理不順」などがあげられます。

また、「高血圧糖尿病感染症緑内障白内障」などを患っている人は、持病を悪化させる恐れがあるので、ステロイド注射をすることはできません。

このような副作用のことを考えると、ステロイドは怖くてとても使えないと思う方もいるでしょう。しかし、ステロイドを含んでいる目薬やを点眼薬を利用する場合には、全身への影響が少なくて済むので医師の指導のもとであれば使用しても問題ありません。

ノイロトロピン注射による治療

ノイロトロピン注射は、ワクシニアウイルスという無害なウイルスをウサギの皮膚に注射して、産生(細胞で物質が合成・生成されること)されることで得られた非蛋白性の活性物質を含む注射液を使用します。

ノイロトロピン」は、花粉症のつらい症状を引き起こす神経機構に働きかけることで、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状を鎮静させる効果があります。

ノイトロピンがどのような仕組みで、その薬効を発揮するのかは解明されていませんが、自律神経を安定させる作用があり副作用や依存性も少ないです。ただし、即効性は期待できません。

ヒスタグロビン注射(非特異的減感作療法)による治療

ヒスタグロビン注射は、アレルギーに対する治療法のひとつですが、特定のアレルギー原因物質(スギ花粉など)を体内に取り込む舌下免疫療法などとは異なり、特定のアレルギー物質に依存することなく、全てのアレルギー疾患から体質を改善できる根本治療です。

ヒスタグロビンは、人の血液を原材料として製造されています。この記事でも紹介しているアレルゲン免疫療法は、スギにアレルギーがある人にはスギ花粉の抽出液をもとにした薬を使いますが、ヒノキやブタクサなど他の花粉が原因で起きているアレルギー治療はできません。

しかし、ヒスタグロビンを使用した「非特異的減感作療法」は、原因物質には関係なくアレルギー性鼻炎全般の治療に役立てることができます。

実際の治療にあたっては、週に1~2回の注射をするために通院する必要があり、治療効果を確認できるまでには時間がかかります。

また、単独の使用ではなくアレルゲン免疫療法など、他の治療法と併用して使われることが多いです。この治療法の具体的な治癒のメカニズムは、現在のところ明らかにされてはいません。

ゾレア皮下注用(一般名:オマリズマブ)による治療

ゾレア皮下注は、「ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤」で、2020年より重症・最重症のスギ花粉症に対して、保険適用の治療を行うことができるようになりました。

既存治療で十分な効果が表れない重症・最重症の季節性アレルギー性鼻炎」への効能効果が期待されています。

スギ花粉症の症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻炎症状は、花粉症の方にはとてもつらい症状です。

しかも、飲み薬や点鼻薬でも収まらず長期間悩んでいる方や、内服薬の眠気が強すぎてより強力な薬剤への変更ができない方にとっては、検討する価値のある高い治療法です。

花粉症に関する治療法の中で、あなたに合った治療を!

いくつかある花粉症の治療の中で、何を選択するかは個々のケースによって変わってくるでしょう。「今抱えているつらい症状を軽減したいのか」、「それとも花粉症そのものを治療したいのか」それによって選択すべき治療は異なってきます。

花粉症(アレルギー性鼻炎)を根本的に治療したいなら、アレルゲン免疫療法が適しています。しかし、長期間にわたる通院が必要です。

とにかく今ある症状を改善したいと思うなら、ステロイド注射が適しています。しかし、重大な副作用のリスクがありアレルギー性鼻炎の治療法としては推奨されていません。

それぞれの治療にはメリットもデメリットも存在します。治療法を選ぶ時には、医師からの十分な説明を受けた上で、自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。


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