アオムシ(青虫)は、農作物に甚大な被害を与える害虫です。 被害が拡大するとキャベツが丸ごと蜂の巣のようになることもあります。 今回はキャベツ農家の天敵、アオムシの生態と駆除対策の方法などについて紹介します。
目次
アオムシ(モンシロチョウ)の生態や発生時期
アオムシはモンシロチョウの幼虫で、 寒冷地域では年に2~3回、温暖地域では年4回~5回のサイクルで発生し、蛹(サナギ)で越冬します。卵は1個ずつで葉の裏側に産卵します。
卵について
モンシロチョウの卵は、先の細く尖った小さくて黄色い卵で長さは約1 mmです。キャベツ畑をひらひら飛びながら、卵を葉の裏に産みつけます。モンシロチョウが飛んでいる近くの葉の裏を見てみると卵を確認することができるでしょう。
若齢の幼虫(アオムシ)について
孵化したばかりの幼虫の色は黄色です。その後幼虫はすぐに葉を食べ始めないで、殻を食べることから始めます。なぜなら殻にはたくさん栄養素があるからです。その後は緑色の葉を食べて成長しながら 、少しづつからだも緑色に変わっていきます。
脱皮を繰り返しながら成長するアオムシ
アオムシは脱皮を繰り返しながら成長し、体もそれに応じて大きくなっていきます。脱皮回数ごとの体長の変化は以下のようになります。
<脱皮ごとのアオムシ体長の変化>
・0回目の脱皮(生まれたばかりはの体長は約2mm)
・1回目の脱皮をした後(体長は約 7mm)
・2回目の脱皮をした後(体長は約11mm)
・3回目の脱皮をした後(体長は約18mm)
・4回目の脱皮をした後(体長は約27mm)
1回目の脱皮から最後の脱皮までの間に20mmも大きくなります。また、脱皮した後に残った皮は、天敵などに見つかると危険なので自ら食べてしまいます。
H3 中齢〜老齢の幼虫(アオムシ)について
アオムシも5齢(4回の脱皮)を過ぎると体長が約27mm ほどになり、 食欲旺盛で葉っぱを食べつくし、透けた葉脈だけになってしまいます。
最も活動的になるのは、 4~6月と9~11月頃で、これらの時期のキャベツを始めとしたアブラナ科の農作物を食べ尽くします。
蛹(さなぎ)について
アオムシが体長40mm ほどに成長してくると、いよいよ蛹になるための準備です。まずアオムシは糸を分泌して体を固定し、葉から落下しないようにします。その後約2週間ほどで蛹の状態になります。
成虫について
さなぎの状態になると暖かい時期であれば一週間ほどで羽化が始まります。 皮膚が薄くなり中の様子が透けて見えるようになるといよいよ羽化です。 羽化は多くの場合、朝に始まります。
成虫になったモンシロチョウは、アブラナ科の菜の花やキャベツ畑を自由に飛び回ります。
アオムシが好む農作物は?
アオムシはキャベツや菜の花などの植物(アブラナ科)を好みます。ではなぜアブラナ科の植物は、アオムシを惹きつけるのでしょう。
アブラナ科植物にはカラシ油(イソチオシアン酸フェニル)配糖体という成分が含まれていまていて、アオムシはこの臭いに反応します。そして、これらの花の蜜はモンシロチョウ)の餌になります。
また、これらの植物の葉は モンシロチョウにとって産卵の場です。 つまり、生涯にわたりお世話になる大切な場(環境)なのです。
<アブラナ科の植物>
・キャベツ
・ナズナ
・ダイコンの葉
・コマツナ
・白菜
・ブロッコリー
アブラナ科の植物が 出す「カラシ成分」は、大根のようなピリッとした辛味の成分で虫を寄せ付けないようにしています。しかし、アオムシにはこの成分を解毒する能力が備わっているため、ほぼアブラナ科の植物を独占的に食べることが可能です。
また、「コスモス」や「ミント」などの草花やハーブ類にも食害をすることもあります。
アオムシの発生時期
アオムシの主な発生時期となるのは、4~6月と9~11月頃です。 特にたくさん発生するのは5月~6月です。 中間地や温暖地域では年5回~8回、寒冷地域では年2回~4回のサイクルで繰り返し発生します。
7月~8月にかけての真夏には、天敵である「アオムシサムライコマユバチ」などの寄生バチが活動的になる時期なので、アオムシの被害は少なくなります。
アオムシの天敵の力を借りる
アオムシ対策のために、人間がキャベツの葉の裏を1枚1枚確認していたのでは途方もない労力と時間がかかります。
効率的に青虫を撃退するには、アオムシの天敵となる昆虫の力を借りることです。 天敵となる昆虫は、捕食や寄生によってアオムシの発生を抑えます。
アオムシコマユバチ
アオムシコマユバチはアオムシに寄生することで撃退します。具体的には若いアオムシを見つけて産卵管をさして、からだの中に卵を産み付けます。
ふ化したハチは、アオムシの体の内側を食べながら成長し、寄生されたアオムシはもう蝶になることはできません。アオムシにとっては最大の天敵と言えるでしょう。
ただし、アオムシが食害した葉に残る網目状の食い跡を目印として探すので、食害が発生する前に対応するのは難しいと言う難点があります。しかし、寄生されたアオムシは次世代に引き継ぐことができないので、翌年の数を確実に減らすことが可能です。
アシナガバチ
アシナガバチは肉食で子供を育てるための餌としてアオムシを利用します。 親のアシナガバチは、アオムシを捕獲すると噛み砕いて子供が食べられやすいように肉団子状にして、巣に持ち帰り子供達に与えるのです。
効果的なアオムシの予防や駆除対策は?
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アオムシの駆除方法としては、手で捕まえる捕殺や殺虫剤、防虫ネットなどの使用、あるいは天敵に捕食してもらうなどいくつかの効果的な対策があります。ここではそれらの具体的な対策について解説します。
キャベツを 防虫ネットや寒冷紗で覆う
キャベツを防虫ネットや寒冷紗(荒く平織に織り込んだ布)覆うことで、モンシロチョウが産卵できないようにします。
しかし、この場合少しでも隙間があるとそこから侵入して産卵し放題に なってしまうので、設置には充分注意する必要があります。 また、作物の世話をするために防虫ネットを一時的に外す時など、その隙に卵を生む可能性もあるので注意しましょう。
レタス(コンパニオンプランツ)を植える
農作物の隣に別の作物を植えることで、 害虫駆除や成長促進に効果がある植物の総称をコンパニオンプランツと言います。
キャベツのコンパニオンプランツとしてはレタスが有名です。レタスをキャベツの隣に植えることで、アオムシを避ける効果があります。農薬を使用せずに害虫駆除が可能で、レタスの収穫もできるので一挙両得な方法といえます。
農薬による駆除
即効性があって強力な効果が期待できるのは、農薬による駆除方法です。防虫ネットの場合は設置や扱いが大変です。コンパニオンプランツは その作物の世話が必要になります。
それらの方法に比べると農薬散布による駆除は、手間が少ないといえます。ただし、農薬の散布は作物にとって大事な益虫も同時に駆除してしまう可能性があるので、有機栽培や無農薬栽培を実施している農家には利用できません。
手で捕獲して駆除する
意外にも手軽で 確実な方法は手で捕獲して駆除することです。 具体的にはキャベツの葉裏に産み落としてある卵を見つけて、捕獲して駆除するというものです。
見つけた卵については確実に駆除することができますが、見落としの可能性があることは否めません。また、大きな畑の場合は重労働になり長い時間がかかってしまい、その隙にモンシロチョウが産卵してしまう恐れがあります。
これらの理由から大規模の畑よりも比較的小さな畑で行うのが一般的です。 駆除する際には同時並行して水をやったり、雑草を除いたりしながら行う農家が多いようです。
アオムシ対策の王道は第1が予防そして駆除
引用元:Amazon/防虫ネット
キャベツを守るために第1に考えなければならないのは予防対策です。アオムシはとても小さな虫ですが、放っておけば大量発生し甚大な被害をの農作物にもたらします。
そうならないためにも、モンシロチョウが葉の裏に卵を産み付ける前に予防策を施すのが一番効果的です。まずは防虫ネットやコンパニオンプランツなどの対策を実行しましょう。
それでもモンシロチョウがキャベツ畑の周りを飛来していたら要注意です。 特にキャベツの葉に穴が少しでも空いていたらアオムシがいる可能性があります。 葉の裏や隙間を徹底的に探して若いアオムシや卵があったらすぐに手作業で駆除しましょう。
被害が大きくなりそうな場合は、 農薬で駆除することも検討しましょう。 とにかく大切なキャベツなどの農作物を守るには事前の予防策と素早い駆除対応が重要です。手に負えないと判断したら害虫駆除の専門業者に依頼しましょう。