アブラムシは、あらゆる植物の栄養を吸収してしまう害虫です。 家庭でのガーデニングやベランダ菜園、花壇などの植物に寄生して被害を及ぼします。
強い繁殖力で1~2週間で大量発生して、気づいた時には大切に育てた草花が、アブラムシの餌食になってしまうのです。 またアブラムシは、ウイルスを運ぶ厄介な害虫でもあります。
今回の記事では、そんなアブラムシの予防や駆除の方法と役立つお勧めの農薬を紹介します。
目次
アブラムシの生態や種類
ここではアブラムシの生態やその特徴について解説していきます。
アブラムシの生態
アブラムシは集団で行動し、 草花や野菜の葉や果実に寄生して汁を吸う吸汁性害虫です。
体長3 mm ほどでカメムシの仲間であり、別名「アリマキ」とも呼ばれています。
春や秋など暖かくて雨の少ない時期に集団で発生し、 日本国内だけでも700種類以上生息していると言われています。
アブラムシは「単為生殖」といって、単独のメスだけで子供を産むことができるのが特徴です。繁殖期である春や秋には、毎日産卵し生まれた卵は10日くらいで成虫に育ち 、また新しい卵を産むというサイクルで大発生します。
この非常に高い繁殖力で、気づいた時には手遅れになるほど増殖しまうケースが、後を絶ちません。また、アブラムシが出す大量の排泄物が原因で「すす病」になることも知られています。
さらにアブラムシがウイルスの媒介者となって発生する「モザイク病」なども大きな問題となっています
アブラムシの種類
アブラムシは、カメムシ目に含まれる仲間に入り、日本では700種類以上が確認されています。 植物によってアブラムシの種類が違うため、多くの種類が存在していますが、ここでは日本国内に生息する主なアブラムシの12種類を地域別に紹介します。
発生地域(分布) | 種名 | 大きさ | 発生時期 |
本州・四国 | クヌギミツアブラムシ | 1.5mm | 5~7月 |
北海道・本州・九州 | ササコナフキツノアブラムシ | 2.0mm | 6~11月 |
北海道・本州・四国・九州 | マメアブラムシ | 2.0mm | 3~11月 |
ワタアブラムシ | 1.0mm | 3~11月 | |
キョウチクトウアブラムシ | 2.0mm | 3~11月 | |
ハゼアブラムシ | 2.0mm | 4~11月 | |
モモコフキアブラムシ | 2~3 mm | 5~11月 | |
本州・四国 | ガマノハアブラムシ | 2~3 mm | 5~11月 |
北海道・本州・四国・九州・沖縄 | キスゲフクレアブラムシ | 2.5~4mm | 5~11月 |
本州・四国・九州 | セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ | 4.0mm | 3~11月 |
北海道・本州・四国・九州 | クリオオアブラムシ | 4~5 mm | 4~11月 |
アブラムシが植物に及ぼす被害
アブラムシが及ぼす被害には、大きく分けて直接被害と間接被害の2つがあります。
直接被害とは?
アブラムシの直接被害とは、農作物や草花、樹木など幅広い植物の新芽や葉裏に、アブラムシが寄生して植物の体内の汁を吸って加害することを指します 。
小さなアブラムシの1匹の吸汁は大したことはありませんが、 アブラムシは群生して被害を及ぼすのでその被害は深刻です。吸汁による被害だけでなく、 樹木や草花などの美観が損なわれることも問題視されています。
間接被害とは?
直接的ではないですが、アブラムシがウイルスを媒介することで、ウイルス病を植物に感染させてしまう危険があります。
アブラムシが病気になっている植物の汁を吸い、他の植物に移動してまた汁を吸うことで、ウイルス病に感染させてしまうのです。
農薬を使用しないでアブラムシを駆除
引用元:Amazon/シルバーマルチ
食の安心や安全志向が高まり、また農業従事者の人体への影響なども考えると、害虫の駆除や防除のために農薬を使用するのは、好ましくないと言う考え方があります。ここでは、全く農薬をしないでアブラムシを駆除する方法について解説します。
シルバーマルチを活用する
シルバーマルチとは、光の反射効果によるアブラムシやその他の害虫に対する忌避効果によって作物を害虫から守る方法です。
農薬使わない安全な方法として優れた効果があり、 アブラムシなどの害虫の集団飛来を抑制することが可能です。
羽のついたアブラムシは、光の当たる方向に向かって飛ぶ習性があるので、シルバーマルチを張り日光を反射させることで、アブラムシの感覚を錯乱させて作物に飛来させないようにすることができます。
シルバーマルチの効果は害虫の防除だけでなく、光の反射効果で果実の着色を良くしたり、保温効果や地温抑制効果を高める働きもあります。
対策としては、アブラムシが飛来する前にシルバーマルチを敷くだけなので、 低コストで効果的な予防方法と言えるでしょう。
てんとう虫による駆除
てんとう虫は基本的に肉食で、アブラムシなどの害虫を食べてくれる益虫です。 てんとう虫を栽培場所に放つことで、アブラムシを食べて駆除してくれます。 てんとう虫は幼虫の段階で1日20匹程度、 成虫に至っては100匹程度のアブラムシを捕食してくれます。
注意して欲しいのは、てんとう虫にはもう1種類、草食の「テントウムシダマシ」という種類がいます。テントウムシダマシは、同じてんとう虫でも植物の葉を食べてしまう害虫で、一見分けがつきにくいので注意が必要です。
間違えない方法としては、通販で生物農薬用として販売されている「てんとう虫」を購入することです。 販売されているテントウムシは飛ばないように開発されており、 畑に定着してアブラムシを食べてくれます。
木酢液を散布する
木酢液は、炭を焼いた時に発生する煙を冷やして液体化したもので、アブラムシが嫌がる 効果があり、これを植物にスプレーなどで吹きかけておくことで忌避剤として使用できます。
おすすめの農薬3選はこれだ!
引用元:Amazon/モスピラン
大切な植物をアブラムシから守るために、最も効果のある方法はやはり農薬を使用することです。アブラムシの駆除に効果的な農薬3選を以下に紹介します。
1.モスピラン
モスピランは、害虫駆除に大きな効果を発揮する殺虫剤です。特に他の殺虫剤で耐性がついてしまった害虫に対しても効果があり、 耐性がついて農薬が効かなくなったアブラムシにもよく効きます。
農薬の種類としては、薄めて使用する水溶剤、粒剤、液剤とそのまま使用可能なスプレー剤があり、一番効果が期待できるのは水溶剤です。 農薬として一番強い成分が配合されているので、 多くの種類の害虫に対して効果が期待できます。
2.オルトラン
オルトランの浸透移行性を持った優れた殺虫剤です。特徴としては効果の持続期間が長く、予防効果も高いです。アブラムシ以外の吸汁性害虫、ヨトウムシなど幅広い食害性の害虫に効果が期待できます。
ただし、ミツバチにも影響が出てしまうため、花粉交配用のミツバチを利用されている方は、使いづらいでしょう。
注釈:浸透移行性とは ...
根や葉から薬効成分が徐々に吸収され、植物の体内を移行することによって葉そのものが殺虫効果を持ち、加害している害虫を撃退することができます。 |
3.スミチオン
スミチオンは発売以来40年近く経過している歴史のある農薬で、その安全性と高い効果ずっと評価され続けています。各種の農作物に発生する害虫に対して、広く世界的に利用されています。
スミチオンは効能効果が高いだけでなく、環境や人に優しいと言う、エコロジカルなニーズを先取りしていた殺虫剤です。
ただし注意点として、白菜や大根などのアブラナ科の野菜については、薬害が出るため使用できません。また、オルトランと同じくミツバチに影響が出ますので注意が必要です。
アブラムシ対策はこまめな観察と早めの発見、早めの対処!
アブラムシの繁殖力は驚異的で瞬く間に広がり、大切に育てている植物に大きな被害を与えます。そのため対策としては、シルバーマルチなどを活用した事前の予防策と、こまめな観察になどによる早期発見、早期対処が一番重要です。
発生してしまった場合には、植物に被害がを及ぶ前に農薬などで適切な処置をすることが必要ですが、 植物を元気に育てるためにも、早期発見を意識してこまめに庭や畑を観察する習慣をつけていきましょう。