大豆に発生する病害や害虫を駆除するには? おもな病気や害虫情報を解説

大豆は、病害や害虫の影響を受けやすく、それによって作柄が大きく変動してしまいます。 品質の良い安定的収穫を得るには、 大豆の病害虫の防除や駆除が不可欠です。

今回の記事では、大豆に発生する主な病気や害虫についての情報や、防除の方法について解説します。 

目次

ダイズ-紫斑病(しはんびょう)

引用元:Wikipedia/ダイズ

大豆栽培では主に害虫の防除が実施されることが多いのですが、 そんな中、大豆の病害の1つである「ダイズ紫斑病」については、しっかりと対策をとられている現状があります。ここでは重要な病害であるダイズ紫斑病の発生原因や防除対策について解説します。 

ダイズ紫斑病とは?

紫斑病の大きな特徴は、大豆に現れる紫色の斑紋です。 見た目を著しく害することもあり、商品としての大豆の品質に大きく影響を与える病害といえます。

大豆の生産過程では収穫物の出荷時の検査が厳格に行われるため、市販の大豆に紫斑病の大豆が出回る事はありませんが、 稀に朝市などで売られている大豆の中に、紫斑粒が混入しているケースもあります。

ダイズ紫斑病の原因

紫斑病の病気原因となっているのは、「サーコスポラキクチイ」と言う糸状菌(しじょうきん)です。圃場(ほじょう:農作物を栽培する場所)に放置され、紫斑病に侵された茎や葉(罹病茎葉) が翌年の紫斑病発生の伝染源の1つになります。

しかし、 おもな第一次伝染源になっているのは、茎や葉ではなく罹病種子です。大豆紫斑病は種子伝染病の代表的な病気と言われています。

ダイズ紫斑病は薬剤散布による防除が効果的!

大豆紫斑病は、薬剤による防除が一般的です。 防除の方法としては、無病地で採取した健康な種子を用いた種子消毒と、 開花期頃から若莢期(開花 30 日後以降)に1~2回の薬剤を散布します。

使用する薬剤はこれまでの長い間、「チオファネートメチル剤」を代表とするベンズイミダゾ-ル系剤が使用されてきました。 しかし、近年各地でこれらの薬剤に対する耐性菌の報告が増えてきており、防除効果の低下が懸念されています。 

ダイズ- べと病

主に大豆の葉に発生しますが子実にも感染します。現れる症状としては、はじめに円形または不規則な形をした黄白色の病斑が現れ、 病斑のある葉の裏面には、灰色で綿毛のような状態の菌叢(きんそう)盛り上がっているのが見られます。

ひどい時には、葉が萎凋(いちょう)して落ちたり、子実が侵されると種皮に亀裂が生じて、白色や黄褐色の菌糸で覆われた状態になり、粒も小さくなってしまうでしょう。

べと病の原因

べと病の原因となる菌は、ツユカビ科に属している糸状菌で、別名「露菌(ろきん)病」と呼ばれることももあります。葉がベトベトになり枯れることや、多湿のベトベトした環境で発症しやすいことで命名されたようです。

べと病は雨が降ることによって、はねた泥が感染の原因となることが多く、密集しすぎた栽培や肥料が過度に多すぎるなどで、 株の生育が弱まり、抵抗力がなくなった時に発症のリスクが上がります。 

ダイズ-べと病の薬剤による防除

被害にあった茎や葉を圃場には残さないことや、病気になりにくい抵抗品種を利用するなど、事前にできることは行なった上で、 ベと病発生の兆候が現れた場合には薬剤を利用して防除することになります。

薬剤は発生初期から使用します。薬剤散布は葉の浦や莢(さや)にも薬剤がしっかりかかるように丁寧に散布しましょう。また薬剤耐性菌の発生を抑えるために、異なる種類の薬剤でローテーションして防除することが効果的です。

ダイズ-茎疫病(くきえきびょう)

卵胞子あるいは罹病した組織から、たくさんの遊走子(無性生殖を行う胞子)を放出することで感染し、被害が拡大します。遊走子は水中を移動して植物にたどり着くため、 この病気が発症するには一定期間、停滞水の状態にあることが条件です。

症状としては、出芽の前から感染がはじまり、不発芽の原因にもなります。 幼苗期では 、地面に接する茎の部分に水浸状(すいしんじょう)の条斑や楕円形をした病斑が現れ、その後に茶褐色~暗褐色の大きな病斑が作られ、最悪のケースでは「立枯症」に発展する場合もあります。

茎疫病の原因

ダイズ茎疫病は、卵菌類(不等毛類に属する原生生物の1つ)の一種によって、発症する病気です。伝染源になる菌は、長期間土壌に残存して大豆や一部のマメ科の植物にのみ感染します。

ダイズ 茎疫病の薬剤による防除

対策としては、輪作を行うなどして伝染源となる菌を圃場に残さないこと。圃場の排水管理を良好な状態を保つことは重要です。 薬剤による防除としては発病の兆候が見られたら植物の株元付近を中心に薬剤を散布を行うと良いでしょう。 

ダイズ 茎疫病に効く薬剤の一覧 

散布剤撒粉ボルドー、Zボルドー、ブリザード、プロポーズ、ベトファイター、フェスティバルC、フェスティバルM、リドミルゴールドMZ、ライメイ、ランマン、レーバス、ワイドヒッター。
種子消毒クルーザーMAXX。

害虫防除1(ハスモンヨトウ)

引用元:Wikipdia/ハスモンヨトウの幼虫

ハスモンヨトウとは ?

深刻な被害をもたらす大害虫として知られているハスモンヨトウは、ダイズの生育中期に大発生するのが特徴です。

食害としては 孵化した幼虫が集団で葉を食べることで、葉が白く透けてしまいます( 白化葉)。その後幼虫は次々と葉を渡り歩き、食害を続けることで大きな被害になります。

幼虫の大きさは成長すると40 mm ほどです。 体の色は淡黄色で、鬼門線の下には黄白線の太い線があります。 

薬剤による防除の方法

8月頃から発生しますが地域によって発生時期や発生量が多少変動するので、発生時期になったらそれぞれの場所で状況を確認しながら、害虫が確認された時点で速やかに農薬散布を始めましょう。

幼虫があまり大きくなりすぎると農薬の効果が薄くなるので、幼虫が小さいうちに農薬散布をすると効率よく防除ができます。 

ハスモンヨトウに効く薬剤の一覧 

アクセル、アタブロン、エルサン、オルトラン(ジェイエース)、トレボン、ダーズバン、パーマチオン、フェニックス、プレオ、フローバック、トルネードエース、ペガサス、マッチ、マトリック、カスケード、グレーシア、ダーズバン、トクチオン、MR.ジョーカー、ラービン、ランネート、ランナー、ロムダン等。

害虫防除2(シロイチモジマダラメイガ)

シロイチモジマダラメイガとは ?

蛾の仲間で大豆の食害をするのは幼虫です。 若齢~中齢幼虫の時期は体の色は乳白色、頭部の色は褐色になっています。成熟して老齢幼虫になると、体色は紫色か白っぽい緑色で、体調は1.5cm 程です。

年に3~4回発生し莢( サヤ)害虫として有名です。 莢に産み付けられた卵が孵化した後、幼虫が莢の中に侵入して子実を食べあらします 。成長した幼虫は、莢から莢へ次々と移動して莢全部が食べつくしてしまいます。

薬剤による防除の方法

シロイチモジマダラメイガの薬剤散布の時期は、8月中旬~9月上旬頃です。大量発生した場合は7~10日間隔で2回散布するようにしましょう。

注意してほしいのは幼虫が莢の中に入ってしまうと、薬剤の効果がないということです。 幼虫が莢の中に入る前に、 莢に薬剤を丁寧に散布することで食害した幼虫を撃退できるようにしましょう。

シロイチモジマダラメイガに効く薬剤の一覧 

エルサン、スミチオン、トレボン、マラソン、ダイアジノン、パーマチオン、ランネート、トクチオン等

害虫防除3(フタスジヒメハムシ)

フタスジヒメハムシとは ?

コガネムシの仲間で、成虫幼虫ともに食害します。 成虫の体長は4 mm 程度で、体色は黄色、背中には、名前が表すとおり2本の黒い筋があります。

成虫は年2回発生し、1回目は7月下旬~8月下旬にかけて、2回目は8月下旬~9月上旬に出現。 ダイズの「葉・子葉・莢・茎」を食害し、葉には不揃いの円孔を多数あけ、幼苗が食害されると生育が悪くなるのが痛手です。

莢の表面を食害されると、子実(しじつ)に黒い「汚斑粒」が現れます。幼虫は根を食害しますが実害はありません。 

薬剤による防除の方法

薬剤としては、アルバリン顆粒水溶剤、ダントツ水溶剤、スタークル顆粒水溶剤、トレボン乳剤などを散布します。家庭菜園では、植物の外観にあまりこだわらないのであれば、 実害はないので防除は不要です。

フタスジヒメハムシに効く薬剤の一覧 

クルーザー、スタークル(アルバリン)、アクセル、アグロスリン、アデイオン、ダントツ、ダイアジノン、トレボン、モスピラン

ダイズの病害や害虫の農薬防除は適期散布が大切!

大豆の病害や害虫の防除に際しては、農薬の適期散布が重要です。本記事を参考にして、農薬の散布を適切なタイミングで実施するようにしましょう。特に手遅れになると、いくら農薬を散布しても効果がなくなるので注意が必要です。

害虫の場合、幼虫が小さいころの方が農薬が効きやすく、効果が高くなります。逆に大きくなった成虫には効果が薄れるので気をつけましょう。 


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