離婚の際、夫婦が持ち合っている財産は「財産分与」として互いに分け合うことができます。財産分与に該当する財産の中で、住宅の次に高額ランクされるのが車です。
今回は財産分与の中で車をどう取り扱うのか、 より良い財産分与の方法は何なのか、考えられるケース別に詳しく解説していきます。
目次
離婚したら保有している車はどうなるの?
夫婦の財産分与は、離婚協議の話し合いの中で決めるのがベストです。但し、離婚前に必ず決定する必要はありません。但し、多くのケースで離婚前に財産の配分が終わらないまま離婚を迎える場合があります。
財産分与は、離婚してから一定期間が経過すると処理できなくなってしまうので、離婚協議の中でどうするかしっかりと話し合うことが大切でしょう。
車は「財産分与」の対象です!
車には財産価値があります。 婚姻期間中に購入した車がある場合は、夫婦の共有の財産であり財産分与の対象です。
財産分与の対象に入らない例として、以下のような場合があります。
● 結婚する前から保有していた車
● どちらか一方の親から譲り受けた車
上記のようなケースでは、特有財産と見なされるので財産分与の対象外です。 特有財産については民法762条1項で定められています。
そもそも財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を、夫婦それぞれが貢献した割合に応じて配分することをいいます。
財産分与については、法律(民法第768条1項)で「離婚の際には、相手方に対し財産の分与を請求することができる」とはっきりと明記されています。
離婚の際に、財産分与について細かい取り決めをせず曖昧にしておくと、もらえる財産ももらわないまま泣き寝入りする可能性さえあります。財産分与は、法律でしっかり認められているので、離婚協議の中でしっかりと取り決めることが重要です。
財産分与の具体例を紹介
財産分与を決める際の財産価格は、別居時点での評価が一般的です。但し、車の評価額を決める際は、実際の分割時を基準に考えることが多いです。
まずは夫婦共有の財産を棚卸しましょう。具体的な方法としては、別居した時点での夫婦の銀行預金残高や不動産、車の評価額などの合計額をあらかじめ算出すると良いでしょう。
基本的な考え方として、その合計金額の1/2ずつを夫婦で分けるのが一般的です。財産分与の一例を以下に紹介します。
● 預金が1,000千万円、100万円(評価額)の車を保有している場合
一例として夫が500万円の預貯金と車、妻側が600万円の預貯金を受け取るということが想定されます。 |
● 100万円(評価額)の車のみを保有している場合
車を売る場合は、評価額の半分の50万円ずつを配分。また片方が車を保有する場合には、保有しない側に半分の50万円を支払います。 |
● 100万円(評価額)の車のみ(ただし、自動車ローンの残金が50万円ある)
ローンの残金が50万円あるので、この場合の車の評価額は50万円です。片方が保有する場合は、ローンも引き受けることになります。この場合、もう片方には評価額の半分の25万円を支払うことになります。 |
財産分与の対象になる場合とならない場合について
基本的に婚姻期間の中で購入した車は財産分与の対象になり、婚姻期間外に購入したものについては財産分与の対象外です。
しかし、婚姻期間中であっても例外的に財産分与の対象にならない場合もあります。以下それぞれについて具体的な例を紹介します。
● 結婚する前から夫婦のどちらか一方が保有していた車
結婚前に購入した車は、夫婦協力のもと購入した車とは言えません。したがって、財産分与の対象外です。 |
● 別居してから夫婦、どちらか一方が購入した車
別居してから購入した車は、夫婦が協力して買った車ではないので財産分与の対象外です。 |
● 夫婦のどちらかが譲り受けた車
夫婦どちらかが他者から車を譲り受けた場合は、例え婚姻期間中であっても夫婦が協力して買った車ではないので財産分与の対象ではなく、譲り受けた人の所有物となります。 |
● 夫婦どちらかの親が購入資金を出してくれた車
親が車の資金を出している場合は、少し難しい問題が生じます。 多くの場合においては、子供というより夫婦のために出資したと考えられるので 、基本的に共有の財産となります。 しかし、一方の親が息子(娘)に現金を渡して、 そのお金で購入している場合は、現金を受け取っている夫(妻)の特有財産と見なされ財産分与の対象とはなりません。 |
財産分与をトラブル無く進めるための方法
ここでは離婚時の財産分与について、トラブルなくスムーズに進めるための方法について紹介します。
離婚届提出前に財産分与を決めておく
財産分与は、離婚届を提出する前に細かく決めておきましょう。 財産分与の決定は必ずしも離婚前でなくても問題はありませんが、離婚してからでは話し合いの機会が減り、場合によっては相手側に協力を得られないこともあります。
最悪の場合、車の名義をもつ側が車を手放すことを拒み続け、売ることができなくなることもあるでしょう。ベストの方法は、面倒でも離婚協議中に財産分与 も決めてしまうことです。
離婚協議書を作成する
離婚協議中に決定されたことは、 必ず離婚協議書を作成するようにしましょう。できれば公正証書として作成することをお勧めします。
公正証書には一般的な私文書よりも高い証拠力があり、私文書をめぐるトラブルを防止して正当な権利を保証する機能があります。
手続きを進める前にやっておべきこと
車を売ったり名義変更をする前に、やっておく必要のあることについて紹介します。
まずは車の名義確認
車検証をチェックすれば車の名義を確認できます。車検証には「所有者の氏名又は名称」という欄がありますので、そこで名義人を確認することができます。
注意して欲しいのは 、所有者の他に「使用者」という項目があることです。車の場合、保有者と使用者が異なっていても問題ありません。
但し、名義人はあくまでも車の所有者になります。 場合によっては所有者が妻や夫ではなく、ローン会社やディーラー名義になっているケースもあります。
このような場合は、ローンが完済されていないことが考えられるので、 ローンを完済して保有権留保を解除する手続きをしなければいけません。
売る前に車の資産価値を調べておく
まずは車を売る前に、車の資産価値を調べておくことが大切でしょう。資産価値を調べる方法としては以下のような方法があります。
● メーカーのサイトにあるシュミレーション機能を利用する
ネットにあるメーカーサイトでは、車の査定シュミレーションが用意されているサイトがあります。 年式や社名などを入力することで、 査定シミュレーション金額が表示できます。
● 販売店などで実際に査定してもらう
より正確な査定金額を知りたい場合には、実際に中古車販売店などに車を持ち込んで査定してもらいましょう。 販売店によっては出張の査定サービスをやっているところもあります。
● ユーカーパックを利用する
ネット上で査定金額が検証できるという点で、メーカーサイトのシュミレーション機能に似ていますが、ユーカーパックでは、複数の会社がオークション形式で査定する点が特徴です。
オークション形式では複数の会社が競争して査定をすることで、査定額は上昇していきますので、 車の売却に詳しくない人でも査定額で失敗しにくい方法と言えるでしょう。
ケース別にみる車を財産分与する方法
財産分与するケースとして、片方が車を乗り続ける場合と売る場合があります。それぞれ財産分与の方法について解説します。
夫婦どちらかが乗り続けるケース
夫婦どちらかが乗り続けるケースでは、以下の2つの方法が考えられます。
● 車の評価額相当の財産を夫(妻)に渡す。
● 車に乗り続けない夫(妻)に対して、 その代償金を払う
保有する車を片方が乗り続ける場合は、 乗り続けることを選択した側が車の評価額分だけの財産を受け取ったとみなし、その金額だけ財産の取り分が少なくなります。
また、 車の評価額を超える財産を保有していない場合は、乗り続ける側が片方に対してその代償金を支払うことで公平性を保ちます。
車を手放すケース
車を売る場合では、その売却金額を夫婦で配分することになります。売った時にかかった費用は、売却してい得た現金から差し引くのが一般的です。
離婚が決まったら早めに車の査定を!
車を含めた財産分与の決定は、 必ず離婚前に決着をつけるようにしましょう。 離婚後の話し合いでは、 車の名義を理由に財産分与を拒否したり、交渉に応じなくなるなどトラブルが発生する可能性は大きくなります。
離婚が決まったら早めに車の査定をして、財産分与をはっきりさせておきましょう。