離婚は、メンタル的に大きな重圧やストレスを抱える問題ですが、もう1つ頭を悩ませる現実的な問題が離婚にかかる費用です。
夫婦間の話し合いで解決できる場合はまだしも、離婚裁判までいってしまうと弁護士費用などが発生し、 金銭的な問題も大きな心配の種です。 辛い感情を抱えながらも冷静になって、現実的なお金の問題にも対処しなければなりません。
今回の記事では、離婚にかかる費用の一般的な相場や、 事前に押さえておきたいお金の問題について解説します。
目次
3組に1人が離婚している現実!
日本では年間でどのくらいの数の夫婦が離婚しているか知っているでしょうか? 2019年度の厚生労働省の調査データでは、離婚件数が20万9,000件にも上っています。
母数となる婚姻件数が約59万9,000件ですので、離婚率は35%前後です。 なんと3組に1組の夫婦が離婚しているという現状です。
引用元:厚生労働省(離婚の年次推移)
離婚手続きの方法と、離婚にかかる費用
離婚の手続きには夫婦の関係性や状況に応じて複数の方法があり、 それぞれにかかってくる費用負担は異なります。 離婚の方法別にそれぞれの違いについて解説します。
協議離婚の場合
協議離婚は、裁判所を利用しないで夫婦の話し合いだけで離婚を決めます。離婚手続きとしては双方が同意した上で離婚届に署名捺印し、役所に提出すれば離婚は成立します。離婚手続き自体には一切の費用がかかりません。
ただし、 話し合いがまとまらない場合時には弁護士を代理人として交渉を進めることもできます。 デメリットとしては費用がかかることですが、 離婚訴訟での弁護士費用よりも安く依頼することができます。
また、離婚協議で取り決められた内容は、正式な「公正証書」として残しておきましょう。口頭での約束や私文書では、後々トラブルに発展する可能性があります。公正証書を作成した場合にはその作成費用がかかってきます。
<協議離婚にかかる費用>
● 夫婦のみの話し合いで解決した場合
項目 | 費用 |
離婚協議(夫婦のみの話し合い) | 0円 |
● 公正証書を作成した場合の費用
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3000万円越え5千万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5千万円毎に13,000円を加算 |
3億円豪邸10億円以下 | 95000円に超過額5千万円毎に11,000円を加算 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5千万円毎に8,000円を加算 |
調停離婚の場合
離婚協議の話し合いで決着がつかない場合は 、家庭裁判所に調停を申し立て、合意に向けた話し合いをすることになります(離婚調停)。
離婚調停では、調停委員が話の中心に入って両者の意見を聞き、調整役となって話し合いが行われます。
調停にかかる費用は、自分で離婚調停を申し立てる場合、数千円程度で収まりますので、費用面での負担は少ないと言えるでしょう。
● 調停にかかる費用
申立手数料 | 1,200円 |
戸籍抄本など | 450円 |
住民票 | 200~400円 |
郵送料 | 800円 |
調停成立時 | 1,000円前後 |
調停を弁護士に依頼した場合は、成功報酬も含めて弁護士費用として70~100万円程度かかります。 (必ずしも弁護士に依頼する必要はありません)
裁判離婚の場合
離婚調停で合意できなかった場合は、「裁判離婚」に進むことになります。ちなみに協議離婚から調停離婚を飛ばして、 裁判離婚に進むことはできません(調停前置主義)。
●離婚裁判にかかる費用(自分だけで裁判を起こす場合)
印紙代 | 13,000円 |
戸籍謄本取得代 | 450円 |
自分だけで裁判を起こす場合は、それほど高額な費用がかかることはありません。しかし、離婚裁判ではトラブルが起こりやすいので、弁護士に依頼せず、自分だけで裁判を争うのは困難を極めるでしょう。
弁護士費用がかかっても、 裁判で有利な形で争うには弁護士の役割がとても重要になります。 弁護士費用は様々ですが、着手料金だけでも20~40万円ほどかかり、 その他にも裁判中の実費や成功報酬なども細く費用としてかかってきます。
離婚に際して避けて通れないお金の問題
離婚に際して避けて通れないのがお金の問題です。考えなければならないことは山ほどあり、多くの手続きもこなす必要があります。
分からないことばかりなので、情報収集能力や体力も必要です。ここでは、 離婚時に迫られるお金に関する問題について、順を追って見ていきましょう。
婚姻費用の分担請求について
婚姻期間中の夫婦は、 お互いを同じ生活水準を保てるように支援する義務があり、収入の多い方が収入が少ない方に対して必要なお金を支払います。
仮に別居中でも離婚していなければ、必要な生活費を入れてくれない相手に対して「 婚姻費用の分担請求」 を請求することができます。
養育費について
養育費とは、「子供が社会人として独立して自活ができるまでにかかる費用」のことを言います。養育費の内訳としては、子供のための衣食住の費用と健康維持のための医療費や教育費などです。
子供のいる夫婦が離婚した場合、子供と暮らさない親は子供と暮らしている親側に、養育費を支払う義務があります。
もしも養育費を支払わなかった場合、裁判所に申し立てることで、強制執行による財産の差し押さえが可能です。 養育費の金額は父母双方の年収と子供の年齢で決まります。
● 一般的な家庭での養育費の例
父の年収(会社員) | 400万円 |
母の年収(パート) | 150万円 |
子供の人数と年齢 | 1人 (5歳) |
養育費の金額 | 2~4万円/月 |
慰謝料について
不貞行為や暴力などの違法行為によって、夫婦関係が破綻した場合や配偶者が著しい精神的なダメージを受けた場合などに、それを金額に換算して損害を償うためのものを「慰謝料」と呼びます。
慰謝料の請求ができるのは、夫婦どちらかに違法行為による明らかな責任がある場合で、 「性格の不一致」など、責任の所在が明確ではない場合は慰謝料は請求できません。
慰謝料の金額は、 基準となるものはなく婚姻期間の長さや責任の度合いに応じて決定されます。協議離婚の場合は、双方が納得すれば金額は自由に設定することができます。
裁判で決定される慰謝料のほとんどは500万円以下となっています。司法統計調査によれば200~300万円が最も多いケースのようです。
財産分与について
夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産は共有財産であり、離婚に際してそれぞれの貢献度に応じて財産は分配されます(財産分与)。
財産分与の割合は、夫婦それぞれの収入に関係なく、基本的に折半です。収入がない専業主婦であっても適用されます。注意してほしいのは財産には債務も含まれるので、住宅ローンの残債などがある場合は、資産から差し引いて計算します。
財産分与を請求する権利は、離婚後2年経過で失効しますので、離婚するまでにきちんと話し合っておくことが大切です。
年金分割について
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金や共済年金の保険料納付実績のうち、基礎年金部分を除いた報酬比例部分について、 一定の条件のもとに 分割する制度です。
年金分割は、基本的に多い方から少ない方へと分割しますが、注意すべきことは分割する対象が公的年金全てではなく、国民年金(基礎年金)を除いた厚生年金と共済年金の部分のみであるということです。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、請求期限は 離婚後2年以内までとしています。
● 合意分割
「合意分割」とは、当事者間の合意によって婚姻期間中に納めた厚生年金の納付記録を分割する制度です。
● 3号分割
3号分割とは国民年金の3号被保険者期間の相手方の厚生年金保険の標準報酬を1/2ずつに分割する制度です。
3号被保険者とは、会社員の夫を持つ専業主婦のことで、 平たく言えば「 専業主婦をしている期間に配偶者が納めた厚生年金の記録を2分の1ずつ分ける」ということです。
離婚後の生活費が心配な時は FP(ファイナンシャルプランナー) に相談しよう!
離婚が成立しても、すぐにのしかかってくるのが離婚後の生活の心配です。厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、 母子家庭でのひとり親世帯年収は243万円と厳しいものになっています。
しかし、そんな中でも将来に向けた計画を立てたり、わずかでも貯蓄をしたりして家計を維持していくことが重要です。
そんな時に専門家として頼りになるのが、 FP( フィナンシャルプランナー)です。 FP は相談者の家計の状況に応じて、何を節約するべきか、どのような工夫ができるのかなど具体的なアドバイスをもらえます。
生活に不安を感じたら、FPに相談して具体的なアドバイスや、将来に向けた計画などを 立てるようにしましょう。