親権を持つ親が病気になったり、遊びやギャンブルに夢中になって子供の面倒を見なかったりで、養育環境に問題が生じた時、親権を変更するにはどうしたらよいのでしょう?
今回の記事では、親権を他方の親に変更する方法とその判断基準、具体的な手続きなどを解説していきます。
目次
親権者を変更する方法は?
親権者を換えるには何をすればいい?
親権者を変更する際に、 必要とされるのは「親権者変更調停」です
● 親権者変更調停とは何?
親権者変更調停とは、裁判所の調停委員会で 親権の変更について、父母がお互いに話し合う場のことです。具体的には、調停委員がそれぞれが持っている意見を聞いて、 意見の調整をしたり合意を図ったりすることで、 親権の変更が妥当であるか検討します。
判断を決定する際には、父母間の合意だけでなく子どもの意向も十分に尊重し、「家庭裁判所調査官」が家庭訪問や通っている学校を訪れるなどして、子供を取り巻く環境を調査して、親権の変更を認めるかどうか慎重に検討していきます。
祖父母は親権者にはなれないのか?
DV や様々な問題によって、父母と子供の関係がよくない場合、 子供にとって父母よりも祖父母と暮らす方が良いケースもあります。
しかし、親権は父母のどちらか一方しかなれないので、祖父母が親権者になることは出来ません。但し、いくつかの法的な手段によっては、祖父母が孫と共に生活することが出来ます。
祖父母が孫と一緒に生活する方法
1.孫を養子にする
祖父母が孫を養子にすれば一緒に暮らすことができます。しかし、その場合は、以下のような条件をクリアしなければいいけません。
<祖父母が孫を養子にできる条件>
● 祖父母双方が養子縁組をする必要がある。
● 孫が15歳未満の場合、親権者の承諾が必要になる。
● 親権者の他にも看護者がいる場合、親権者と監護者の承諾が必要になる。
2.祖父母を「監護者」として指定する
父母が子供に適切な養育をすることに問題が生じている場合、 祖父母が監護者となって孫を育てる方がベターであるケースもあります。そういった場合、祖父母が「監護者指定の調停」を申し立てることが出来ます。
親権者を換えられるケースとは?
「調停の申し立て」をすれば、親権者変更が必ずしも容認されるわけではありません。 それではどんな時に認めることができるのか、解説していきましょう。
「親権者を換えること」はそう簡単なものではない!
親権者変更は簡単ではありません。なぜなら、容認されるケースが限られているからです。元来、1度決定された親権は、「子供に対する影響を充分に考察して、むやみにに換えてはならない」という考えが前提にあります。
判断基準としては、親権者として 適任なのはどちらかという判断に加え、現在の親権者による子育て環境が「離婚時に比べて 悪化したのか? 子供の利益を損なうような環境になっているのか?」という観点が重要になってきます。
親権者変更が容認される具体的なケースとは?
親権者変更が容認されるのは、現在の親権者の下で、子供の利益や福祉に問題が発生しているかがどうかが争点になります。
<親権者変更が容認されたケース>
1. 親権者がギャンブルや遊びにのめり込んでいて、子供の面倒を見ていない
2. 子供に暴力を振るっていた事実がある
3. 親権者が死亡したので、速やかに親権の変更を行ったほうが良いと思われるケース
離婚時に不倫が原因で親権を得られなかったケースでも親権者変更の申し立ては出来る
「子どもにとって最大の利益があるのはどちらか」ということが明確な判断の基準です。 つまり、浮気や不倫などの「有責配偶者」かどうかは関係ありません。
親権者変更が認められる基準とは?
裁判所において親権者変更が容認されるには、 親権者変更を認める上で考察すべき基準を知ることが重要です。裁判所がどのような事情を総合的に考察した上で、判断しているのかを解説していきます。
「親権者変更調停」を申し立てられてしまった親側の事情
裁判所は、まず親権者側の事情を考察します。 そして離婚時の養育環境と比べて、特別に悪くなったなどの事実がない限り、親権の変更は出来ません。現状の養育環境として考察されるのは、以下のような項目になります。
1.養育環境が悪くなっていないか?
離婚した時と比べて、養育環境が悪くなっていないかが確認されます。例えば、ギャンブルなどの浪費によって生活が困窮して、子供に十分な食事を与えられないようなケースでは、 養育環境の悪化を指摘されるでしょう。
2.子供への愛情は十分であるか?
親権を持つ親が、子供に対して十分な愛情を注いでいるかが考察されます。 愛情の有無に関しては、 親の言動よりも、虐待などの客観的事実に基づいて判断します。
3.親権を持つ親の心身の健康はどうか?
親権を持つ親の健康状態が考察されます。 例えば、重病であったり、うつ病など精神的疾患を患っている場合は、子供の養育は困難であると判断する可能性が高いでしょう。
「親権者変更調停」を申し立てた親側の事情
基本的に 申し立てられた親と同じ内容で調査されます。具体的には以下のような調査項目です。
<非親権者側に対しての事情調査>
1. 養育環境が適切であるか?( 安定収入があり通園通学などの環境が適切かなど)
2. 子供に対する愛情は十分あるか?
3. 心身の健康に問題はないか?
上記のように 、どちら側に対しても調査する内容は同じで、決定基準となるのはどちらが子供にとってメリットや価値のある養育環境を提供できるかです。
子供の事情
父母の事情にくわえて子供の事情についても考察されます。まず、社会的通念として「子供が幼いほど母親が育てるべきだ」という考えがあります。
そのため、母親に親権がある場合は「虐待をしていた」など、 著しい養育環境の悪化が見られなければ、親権の変更は認められにくいでしょう。
15歳以上の子供は、原則として子供の意思を尊重しなければならないことになっています。しかし、最近の裁判所の事例では、12歳前後から子供の意思を考察しています。
また、子供の精神的安定に配慮することも必要です。 特に子供が感じている夫々の親に対する「愛情の深さや大きさ」が重要な判断材料になります。
それに加えて、現在登校している学校での先生や友達との関係を含む、教育環境が良好かどうかも判断材料になるでしょう。
親権者変更の申立て手続き
ここでは、具体的に親権者変更の申し立て手続きの方法について解説していきます 。
「親権者変更調停」の申し立て
親権者変更調停は、親権者である相手の住所地に存在する家庭裁判所にて、申し立てることが できます。
申立に必要な書類は以下の通りです。
<親権者変更調停に必要な書類>
● 親権者変更調停申立書
● 申立人の戸籍謄本
● 相手方の戸籍謄本
● 当事者目録
「親権者変更調停申立書」の書き方
「親権者変更調停申立書」は、下記のサイトからダウンロードできます。
引用元:裁判所(親権者変更調申立書 )
書き方については、同じく下記のサイトにある記入例を参考にしてください。
「当事者目録」の書き方
「当事者目録」は、下記サイトからダウンロードできます。
引用元:裁判所(当事者目録 )
当事者目録の書き方は、一番左の欄に申立人、相手方、法定代理人などの区別がわかるように記入し、それぞれについて本籍、住所、氏名、生年月日などを記入します。
「親権者変更調停」の申し立てにかかる費用
収入印紙代と郵便切手代がかかります。内訳としては以下のようになります。
申立にかかる費用
収入印紙代 | 1200円(子供1人につき) |
郵便切手代 | およそ800円( 家庭裁判所によって異なる) |
「親権者変更調停」の流れ
「親権者変更調停」の手順は、離婚調停と同じです。基本的な流れは、以下のようになります。尚、家庭裁判所調査官による調査は、調停開催の間に実行されます。
1.家庭裁判所調停に申し立てをする |
↓
2.調停の期日を決定する |
↓
3.第1回目の調停の開催 |
↓
4.第2回目以降の調停の開催 |
↓
5.調停の終了 |
親権の変更を勝ち取るために弁護士に依頼することも検討しよう!
親権調停は、必ずしも弁護士に依頼しなくても進めることができますが、少しでも悩みや不安を感じたり、「費用はかかっても何とか親権を勝ち取りたい」と思っている場合は、弁護士に依頼することも検討しましょう。
弁護士に依頼することで、専門知識や経験を活かした争いが可能になり、 勝つ可能性が高くなることは確実です。しかも、弁護士を立て調停に望むことで、 調停に懸けるあなたの真剣さが、調停委員に伝わり有利に働くことは間違いありません。